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ニューカラーのアラビア数字ダイヤル、そして新たにセクターダイヤルが追加。
独立時計師・浅岡 肇氏が、着る服を選んで全体をコーディネートする際に、“腕時計だけが目立ってしまうことがない時計とはどんなものか?”という観点で開発を進めたという、クロノ ブンキョウ トウキョウの34mmコレクション。自身が好む1930年代のアール・デコスタイルのヴィンテージウォッチが持つデザインと小振りなサイズで表現されたその時計は、昨年発表されるや否や、ホームページでのみ購入可能という販売スタイルにもかかわらず、あっという間に完売してしまった。そんな話題のコレクションに、待望の新作が発表された。
前回は、フルアラビア数字インデックスに、それぞれカラーリングの異なるブルズアイデザインダイヤルを合わせた4つのバリエーションを展開。新作もラインナップは4種だが、今回はグレーとホワイトの落ち着いたダイヤルカラーで構成したアラビア数字ダイヤルが2種、そして新たに幾何学的なデザインを持つ2種のセクターダイヤルが用意されている。
昨年は発表に際して実機に触れる十分な時間が得られたため、34mmコレクションのHands-On記事を執筆した。今回の新作は前回のものとそれほど大きくは変わっていないため、基本的なスペックや作りの詳細については、そちらの記事を読んで欲しい。
新作の価格は前回と同様、各16万5000円(税込)。そして前回購入できずに悔しい思いをした方には朗報だ。うれしいことに、販売数は前回の各80本を大きく上回る各150本となった。販売は公式サイト上で、日本時間の3月10日から開始される予定だ。
ちなみに前回は、渋谷でのポップアップディスプレイにて事前に時計を見られる機会が設けられたが、今回は昨年、北青山にオープしたKURONO TOKYO AOYAMA SALONで3月2日から実機の展示が行われる。この展示に伴い、同サロンを訪れた方は、日本国内に居住している方に限られるものの、3月7日まで先行予約を受け付けるという(先行予約枠は数に限りがあるため、抽選制となる)。
クロノ ブンキョウ トウキョウ 34mm C034F(ダークグレー/ホワイト)とケースバック
ファースト・インプレッション
筆者は過去に、34mmコレクションについてニューオールドストックのような雰囲気を持ち、現代の時計らしい作りが同居した日常使いできるヴィンテージウォッチのようだと評した。そして、ヴィンテージウォッチは好きだが、気軽につけられないと敬遠していた人、そしてコストパフォーマンスの高い時計を求める人にとっても、理想的な選択肢のひとつとなってくれるだろうということも言及した。
そうした考えは、今回の新作においても変わらないのだが……、正直に言おう。魅力的ではあったものの、前回の34mmコレクションは、それほど筆者の物欲の琴線に触れなかった。理由はいたって単純だ。ダイヤルカラー、そしてホワイトやブルーのレザーストラップがどうにもポップな印象で、好みではなかったのだ。“もう少し落ち着いたトーンのカラーリングだったらよかったのに”と思ったのが、実のところの感想であった。
クロノ ブンキョウ トウキョウ 34mm 左からC034E(ホワイト/ライトグレー)、C034F(ダークグレー/ホワイト)、C034G(ブルー/ネイビー)、C034H(アイボリー/ライトブラウン)
だが、新作の画像を見て気持ちが大きく揺れ動いた。いずれのバリエーションも落ち着いたトーンのダイヤルカラーが採用されており、レザーストラップもすべてシボありのブラックカーフレザー。このシックな雰囲気は筆者の好みだ。
そして何といっても強く心を引かれたのは、新登場のセクターダイヤルだ。これは、アール・デコを代表するダイヤルデザインのひとつで、さまざまなブランドによって1930年代の短い期間にだけ製造された。このデザインはケース形状や搭載機能を超えて、同時期のさまざまな時計に見ることができ、多彩な名品が生み出された。例えば、セクターダイヤルを持つパテック フィリップのRef.96などは、ほかのデザインよりも高く評価されている。
円と放射状のラインを組み合わせた幾何学的で存在感のあるデザイン。ヴィンテージウォッチ好きのあいだで高く評価され、その個性的なスタイルと希少性から世界的に人気だが、それゆえセクターダイヤルのヴィンテージウォッチはなかなか手に入りにくい。そんなセクターダイヤルを持つ腕時計が、現行の時計ならではのしっかりとした作りで、しかも値ごろ感のある価格で手に入るのだ。さらに4分の1秒単位で設けられた文字盤外周の目盛りも筆者の好み。興奮しない訳がない。
クロノ ブンキョウ トウキョウ 34mm C034E(ホワイト/ライトグレー)とC034G(ブルー/ネイビー)
一方、こんなことを言っては何だが、新作は昨年発表されたコレクションのバリエーション展開である。とはいえ、単なるデザイン違いかというと、実はそうとも言い切れない。
聞くところによると、ミッドナイトのブルー/ブラックのセクターダイヤルは、1930年代に行われていたのと同じように、パッド印刷とシルク印刷を使い分けることで、より精密で高精度の印刷を実現しているという(すべての文字盤において何度もプロトタイプが作られているそうだ)。また、サファイアクリスタル風防は透過率が向上しており、無反射で指紋が付くのを防ぐ仕様でありながらも、無反射コーティング特有の青みを抑えることに成功。針の質も改良されており、夜光塗料を1本1本手塗りで施す方法に変更されているというのだ。そう、価格はそのままに、新作では細部にわたってアップデートされたのだ。こうした情報も、筆者の物欲を刺激してくれた。
いちばん気になっているのは、ブルー/ネイビーのカラーリングを持つセクターダイヤルのC034G(ミッドナイト)だが、読者の皆さんはどのバリエーションに心引かれるだろうか? いずれにせよ、前作よりもシックにまとまった新作は、どんな人でも手を伸ばしやすい時計に仕上がっていると思う。そして購入のチャンスが広がったとはいえ、セクターダイヤルモデルを手に入れるためには、なかなか骨が折れそうである。
クロノ ブンキョウ トウキョウ 34mm C034F(ダークグレー/ホワイト)とC034H(アイボリー/ライトブラウン)
基本情報
ブランド: クロノ ブンキョウ トウキョウ(Kurono Bunkyō Tokyo)
モデル名: 34mm
型番: C034E(ダークミスト)、C034F(スモーク)、C034G(ミッドナイト)、C034H(パーシモン)
直径: 34mm
厚さ: 9.6mm
ケース素材: ステンレススティール(316L、鍛造)
文字盤色: ホワイト/ライトグレー、ダークグレー/ホワイト、ブルー/ネイビー、アイボリー/ライトブラウン
インデックス: アラビア数字アワーインデックス、レイルウェイミニッツトラック
夜光: 時・分針とアラビア数字アワーインデックスに蓄光
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: カーフレザーストラップ、SS製尾錠
ムーブメント情報
キャリバー: MIYOTA 90S5
機能: 時・分表示、センターセコンド
直径: 25.6mm
厚さ: 3.9mm
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24
価格 & 発売時期
価格: 各16万5000円(税込)
発売時期: 3月10日(金)午後11時(日本時間)から。 ※クロノ ブンキョウ トウキョウ公式サイト上での販売。購入の際は、事前に公式サイトにて要アカウント登録(登録無料)
限定: あり。各色150本限定
武運を開く吉祥の象徴、飛翔する鳳凰をベゼルに刻んだ、職人謹製の数量限定モデルが登場
MRG-B2000KTは、MR-Gのために特別製作された日本刀の鐔「鐵鐔(くろがねつば)」をモチーフに、武具に宿る強さと美しさ、和の美意識を感じさせる造形美と色彩美を、MR-Gが追求する伝統と革新を融合したものづくりで具現化した限定モデルです。
彫金師・小林正雄氏が手がけたベゼルには、吉祥の象徴である鳳凰の意匠が彫り込まれ、工芸品のような美しさとともに、刀に宿る強く気高い武士の精神性が表れています。鳳凰の頭と尾を左右に配置した構図、肉合彫り(ししあいぼり)という伝統技法を用いた立体感のある描線により、飛翔する鳳凰の躍動感を大胆かつ精緻に表現した彫金は、一つひとつ手作業で仕上げられ、一点ものとして唯一無二の特別な表情が楽しめます。さらに、熱した鉄の素肌のような深い青緑色を表す「鐵色(くろがねいろ)」を表現するため、深層硬化処理を施したチタン素材の表面をグリーンDLCコーティングで仕上げました。
ダイアルリングにあしらったグラデーションカラーは、優雅に舞う鳳凰の美しさをイメージしています。矢がまっすぐに飛んで的を射ることから魔除けの意味が込められている矢羽根文様のダイアル、曲線形状で刀の反りを表現したインデックスなど、造形のすみずみにまでMR-Gらしい伝統美へのまなざしが感じられます。
ものづくりへのこだわりを高め合う存在として伝統職人とまなざしをともにし、工芸と時計、それぞれの領域を横断して刀剣の世界観を表現した特別仕様のMR-G。世界限定800本でお届けします。
鐵色の存在感。鳳凰の躍動感
「鐵鐔(くろがねつば)」を手がけた彫金師・小林正雄氏みずから鳳凰の装飾を施した特別誂えの彫金ベゼル。日本刀の鐔に見立てたベゼルの左右に鳳凰の頭と尾を描き分ける大胆な構図を取り入れ、肉合彫り(ししあいぼり)という技法を用いることで、立体感、躍動感あふれる吉祥を告げる鳳凰の飛来を表現しました。周囲に施した荒々しい石目模様が、威風堂々とした意匠を際立たせます。
伝統と革新を追求するMR-Gが、日本を代表する匠の技と共鳴
職人の技と感性を駆使し、鎚(つち)と鏨(たがね)のみで仕上げられる鳳凰彫金は、まさに名匠入魂の出来。手作業でひとつひとつ丹念に刻み込まれるため、ひとつとして同じものはなく、一点物としての存在感を放ちます。
彫金の下地となるベゼルの素材にはチタンを使用。鉄の焼肌に見られる暗い青緑色を表す鐵色(くろがねいろ)を、グリーンDLCコーティングを施すことで表現しました。日本の伝統色として受け継がれてきた気品ある色調が、名匠の手による鳳凰の存在感を際立たせます。
[プロフィール]
彫金師・小林正雄
滋賀県大津市で祖父の代から続く錺師の三代目。京都にて彫金を学び、彫金師としても活躍。神社仏閣の金具の制作や文化財の復元のほか、茶道具や美術工芸品など、幅広い分野の錺金具製作を手掛ける。日本を代表する金属工芸作家の一人。
絢爛の装い。吉祥をもたらす「鳳凰」の極彩色
「鳳凰」とは神話に登場する伝説の霊獣で、古来より美術、工芸に数多く描かれるなど、吉祥、高貴、至福、長久のシンボルとして尊ばれてきました。本モデルでは、その神々しい姿を彩る極彩色を、色鮮やかな配色で表現。ダイアルリングに赤から橙に移り変わるグラデーション蒸着をあしらい、絢爛豪華に仕上げました。
さらに、叡智の象徴として真実を見抜く力を持つとされるエメラルドを、ベゼルのビスに4石セット。テーマカラーの鐵色(くろがねいろ)と調和し、美しい輝きとともにその印象を深めます。
文様、色彩に宿る唯一無二の存在感
ケースの独特の文様は、刃文に見られる沸(にえ)をイメージ。純チタンを再結晶化処理することで、刀の焼き入れによって生まれる沸の煌めく美しさを表現しています。加えて、日本刀の拵えの様々なパーツの主な材料である銅の色合いをブラウンAIPで表現しました。
鉄と火が織りなす武具の強さ、美しさを、MR-Gならではのこだわりで体現しています。さらに、9時側の側面に「2025 LIMITED」のメタルプレートを配置。限定モデルならではの特別仕様に仕上げています。
※製造上の理由により、ケースの文様には個体差があります。
こだわりの色と優れた硬度を同時に叶えるコーティング技術、AIP
AIPは、アーク放電のエネルギーによって、金属材料を瞬時に気化させてプラズマ状態にし、皮膜となる元素をイオン化させる表面処理技術です。一般的なIPに比べて、高い密着性と硬い皮膜の形成が可能です。AIPの最たる特徴は、強力なエネルギーで一気に気化させ、均一で美しい皮膜をさまざまな金属の表面に形成できること。これによって、MR-Gが追求する日本特有の色彩、ひいては、豊かなカラーバリエーションを実現しています。
※AIPは神戸製鋼所の商標です。
超精密加工が生み出す、精緻なダイアルデザイン
ディテール感が際立つ彫りの深い立体造形に、日本伝統の意匠を取り入れました。ダイアルには、矢で災いを打ち破る魔除けの縁起物、破魔矢を図案化した矢羽根文様をデザイン。緩やかな曲面形状に微細な挽き目加工を施したインデックスは、鋭利な刀の反りをイメージしています。
こうしたパーツ製作に欠かせないのが、山形カシオの超精密加工技術。成形用の金型にナノレベルの加工を施すことで、エッジの効いた形状や微細な表面加工など、細部まで作り込まれたMR-Gならではの表情を生み出しています。
世界限定800本。特別仕様の証
伝統職人が手がける本モデルは、800本のみの限定生産。
裏蓋にシリアルナンバーを刻印。専用のスペシャルパッケージでお届けします。
経年劣化に強いデュラソフトラバーストラップ
頑丈なケースにふさわしいダークグリーンカラーのデュラソフトラバーストラップは変色、汚れ、経年劣化に強い特徴をもちます。古来より強さの象徴とされる毘沙門亀甲の文様をあしらったストラップは、柔らかく肌触りのよい質感によりアクティブなシーンでもストレスなく装着することができます。チタン製の中留は、ケース同様に深層硬化処理とブラウンAIPを施して、さらなる堅牢性を実現しています。
クラッドガード構造
りゅうず、ボタン部に保護パーツを組み込み、モジュールへの衝撃を緩和。
また、スマートフォンリンクと標準電波による自動時刻修正に対応。光発電で各種機能を安定駆動します。
スーパーイルミネーター
高輝度なLEDライトで暗所での視認性を向上。傷にも強く透明度が高い素材に反射防止コーティングを施し、クリアな視界を確保すます。
【仕様】
MRG-B2000KT-3AJR
メーカー希望小売価格:¥935,000(税込)
世界限定800本 シリアルナンバー入り
Bluetooth® / MULTIBAND 6 / TOUGH SOLAR /
Premium Production Line
スマートフォンアプリ
– 自動時刻修正
– 簡単時計設定
– ワールドタイム約300都市
– 時計ステータス表示
(時刻受信状況、ソーラー発電状況、内部データ更新履歴などをグラフィカルに表示。)
– セルフチェック
(時計の各機能が正常に動作するか自動診断。異常がある場合、画面表示で知らせます。)
– 携帯電話探索
– Premium Production Line生産証明書
本体機能
• 耐衝撃構造
• 耐磁時計(JIS1種)
• 20気圧防水
• タフソーラー
• スマートフォンリンク
• 標準電波受信機能(マルチバンド6)
• 針位置自動補正機能
• デュアルタイム
• ストップウオッチ
• タイマー
• 時刻アラーム
• LEDライト(スーパーイルミネーター)
• 日付・曜日表示
【お問い合わせ】
カシオ計算機 お客様相談室
TEL.0120-088925(時計専用)
このユニークピースに革新的な進化をもたらしたのは、最新鋭の3Dプリント技術とブランドに貫かれる確固とした時計づくりの理念だ。
最新カーボンファイバーケースにみる実用時計メーカーとしての矜持.
デジタル技術の発達によってウェアラブルツールの機能は格段に進化を遂げた。ネットを介したさまざまな情報の収集や、GPSによる位置の把握から移動速度の計測、さらに心臓の鼓動や血圧を検知し、体内の奥深くまで探査の網を張り巡らせる。これに対し、アナログの機械式時計も負けてはいない。大いなる創造力と伝統技術の革新によって、その限界をさらに超えていく。今年発表されたオリスのプロパイロット アルティメーターはまさにその証左だろう。
オリスは2014年に自動巻き腕時計で初めて機械式高度計を搭載した。正確な時間と高度をダイヤルに表示する機能は、パイロットやアルピニストに高く支持され、その独創的な機構と高い技術力は多くの時計愛好家も一目を置く。
新作は3年の開発期間をかけて、このユニークな魅力にさらなる磨きをかけた。シンボルである高度計のスペックを従来の高度4500m(1万5000フィート)から6000m(1万9700フィート)へと向上させ、ケース素材も新開発の軽量カーボンファイバーを採用した。さらにムーブメントも薄型のCal.793に一新し、56時間のパワーリザーブを実現するとともに、ケース厚も前作より1mm薄い約16.7mmに抑えている。
ブラックの文字盤に時分針を幾重にも取り巻く数字と目盛りは、まさにコックピットの計器を思わせ、たとえ航空機を操縦したことがなくても魅せられるだろう。だが操作はいたって簡単だ。
まずは4時位置のリューズを引き出し、赤いリングの表示の高度計を起動する。さらに1段引き出し、リューズ操作で6時の赤い三角形が管制塔などの指示する基準気圧を指すように合わせると、黄色い2本線のポインターが現在地の高度、赤色のポインターが絶対気圧を指す。リューズを1段戻せば、黄色のポインターが自動で現在の高度を示す。
設定はこれだけ。フライトの準備は完了し、いつでもあなたは操縦桿を握って大空へと羽ばたけるというわけだ。
オリス プロパイロット アルティメーター 88万円(税込)。時計の詳細はこちら。
6000mまで表示できるように高度計のスペックが進化した新型のプロパイロット アルティメーター。なお、写真のメートル表示タイプのほか、フィート表示タイプも用意されている。Photo Courtesy ORIS
ダイヤル側の表示はメートルかフィートのどちらか一方になるが、チタン製のスクリューバックケースにメートル/フィート表示換算スケールを施すことでどちらの表示にも対応する。Photo Courtesy ORIS
2時位置のリューズは時刻とカレンダー表示を操作するためのもので、高度計に関するものはすべて4時位置のリューズに集約。独創性だけでなく、ユーザビリティも追求されている。Photo Courtesy ORIS
文字盤の外周に記した高度表示は、白い数字が0〜3900mでひと回りしたあと、2段目の黄色い数字の4000〜6000mに続く。航行時はFL(フライトレベル)が記された赤い三角を6時位置の三角に合わせる。チタンのケースバックはねじ込み式で、メートルとフィートの換算尺が刻まれている。チタンはこのほかベゼルとふたつのリューズにも使われ、いずれもグレーPVDを施し、軽量性と高強度に寄与する。
実用的な自動巻きに機械式高度計を搭載する時計は唯一で、これは高度計をムーブメントに積層する際に巻き上げローターが干渉してしまうためだ。この回避のため、プレートを設け、両者を分離している。
機械式高度計の原理はけっして複雑ではない。メタル製のダイヤフラムが周囲の圧力に応じて変位し、その動きを針に伝える。だが時計の場合、問題になるのが気圧を感知する開口部から湿気が入り、防水性が損なわれることだ。これに対し、オリスは空気を通しても湿気は遮断する独自のPTFE防湿壁を開発し、特許を取得している。
新作ではこうした独自の機構を包み込むケースに、新たなカーボンファイバーコンポジット素材を採用した。これは、ETHチューリッヒ大学(スイス連邦工科大学)から独立した9T研究所とのパートナーシップから生まれたものだ。9T研究所は前例のないカーボンファイバー加工法を開発するため2018年に設立されて以降、宇宙開発や航空機器をはじめ多くの加工品を生み出してきた。オリスはその設立当初から時計のケース開発について協業を打診していたのだ。
こうして選ばれたのは、カーボンファイバーと高分子ポリマーPEKKの複合素材だ。PEKKは化学的にも強く、耐熱性に優れ、両者を合わせることで軽量性と強度を併せ持つ。これまでも複合素材として時計の外装に用いられていた素材だが、プロパイロット アルティメーターが画期的なのはこれをワンピース構造のケースで実現したことだ。ラグを一体成形したケースに、ムーブメントを直接収め、風防とチタンの裏蓋をはめ込む。さらにリューズをセットするという複雑かつ高い精度が求められる造形に加え、気密性も確保しなければならない。これを既存のカーボン成形技術で作るのは難しく、9T研究所は“積層造形と成型”を基にした独自の製造法を生み出した。着目したのは3Dプリント技術だ。
3Dプリントの技術革新は目覚ましく、今や最先端分野はもちろん、建築や医療、食品など非製造業まで広がり、新たな産業革命と呼ばれるほどだ。今回の9T研究所独自のソフトウェアによる3Dプリント技術も複合素材を安定した密度や形状で融合・最適化し、一定の品質で最終製品の量産を可能にした飛躍的な発明である。
3Dプリント技術は時計製造の現場でも今や欠かせない。だが開発時のプロトタイプとは異なり、量産に成功したカーボンファイバーケースは前作より70gも軽い約98gを実現している。なお、カーボンファイバーと高分子ポリマーPEKKの融合プロセスについては技術的なノウハウにかかわるため、明確な回答は得られなかった。
ハイテクな素材や製造プロセスから生まれたにもかかわらず、その表面には木の年輪を思わせるようなパターンが浮かび上がる。積層した素材が生み出す固有の美しさは、3Dプリントによる予期せぬデザインであり、プロパイロット アルティメーターを腕にハイキングや登山を楽しむナチュラリストにも好感を与えるに違いない。そしてサステナビリティにおける3Dプリント技術の可能性も示唆するものとなった。
加工を完璧にコントロールすることで素材のロスをなくし、従来の工法より効率を格段に向上させる。それは“未来のための気候中立型移動”を志向し、新しいデザインと製造工程を提供する9T研究所の活動に沿う。それと同時に海洋環境保全をはじめサステナブルに取り組み、社会貢献をミッションにするオリスの企業理念にも通じ、両者のまなざしは共通の未来に向いている。
来年オリスは創業120周年を迎える。だが歴史を振り返れば、その歩みはけっして平坦ではなかった。1934年に制定されたスイス時計法では、同国内での競争を防ぐために新技術の導入が制限され、オリスは安価な時計製造を強いられた。これに対し、10年にわたる法廷闘争の末、1966年にはついにスイス時計法を覆したのだ。さらに1970年代にグループ傘下になるものの、1982年に当時の経営陣が自社株を買い取り、クォーツウォッチを廃止し、機械式時計のみの製造を選択した。これによってオリスは独立系ブランドとして再起したのである。
そこには“Go your own way(自分の流儀を貫く)”という反骨精神とともに、“Real watches for real people(真に生きる人のための本物の時計)”を作るという揺らがぬ理念が根底に貫かれている。それは武骨さに本当の価値や人間の自由な精神性を宿すプロパイロット アルティメーターも例外ではない。だからこそ、この時計は極めてオリスらしいといえるのだ。
500本限定でリリースされる“ブリュー メトリック”は、無駄を省いて洗練された印象に仕上げた、時刻表示のみの時計だ。
ブリューウォッチはリミテッドバージョンであるメトリック クロノグラフのデザインを新たに発表したばかりだが、こちらは機械式自動巻きムーブメントを搭載した時刻表示のみの時計で、525ドル(日本円で約7万7000円)というお値打ち価格の商品として登場した。
ブリュー メトリック オートマティック
メカクォーツムーブメントを排除し、セイコー製NH35Aを採用することで、時刻表示のみかつ、36mm径(全長41.5mm)、厚さ10.75mmの堅牢なステンレス製ウォッチが手に入る。コーヒー豆に似たブリューのロゴは12時位置にセットされ、ポリッシュ仕上げのSS製インデックスの外側にあるオレンジのアクセントは、同じくオレンジに塗られたロリポップの針とマッチ。またそれらの締めくくりとして、70年代にインスパイアされたヴィンテージウォッチを現代風にアレンジしたような、クリーミーな夜光をアクセントとして配している。
この時計は現在ブランドのウェブサイトで販売されており、500本限定で提供される。
我々の考え
正直に言おう。今年も半ばに差し掛かり、私は少しリリース疲れを感じ始めている。1年をとおして何度も時計をリリースしているブランドはたくさんあるが、多くの場合はダイヤルが変わるだけで、それ以外が出ることはあまりない。クラシック音楽が好きな人には、これが1900年代初頭のように感じられるといえば理解いただけるだろうか。すべてが“テーマによる変奏曲”なのだ。とはいえ新しいメトリック オートマティックは、ブリューのようなブランドが余計なことをせずに改良を重ねることのできるデザイナーを指揮官に据えることで、いかに恩恵を受けるかを示している。
ブリュー メトリック オートマティック
新しい時計は、私が先月直接対決させた2本のメトリック クロノグラフからインスピレーションを得ていることは間違いないが、無理をせずによくデザインされた、完璧な中間点に達していると思う。私はロリポップ針(どの時計から着想を得たのかは定かではないが、個人的には昔のニバダ グレンヒェン CASDを思い出す)が大好きで、ダイヤルにはあのメトリック クロノグラフで気に入っていたポルシェデザインの雰囲気が今でも残っている。クロノグラフは大好きだが、実際にはほとんど機能自体使っていないので、この機能を省いた機械式のオプションのほうが理にかなっている。
プレスリリースには“ディスプレイケースバック”と記載されているが、写真を見た感じだとそこまでは言えない。とはいえ腕時計を初めて扱う人の多くは、機械部品の動きを垣間見ることができる“ハートビート”ダイヤルやスケルトナイズされた腕時計に魅了されることを知っている(ムーブメントの仕上げや品質に関係なく)。私は10年以上前にスケルトンのフォッシルを購入したが、歯車が動くのを見ると、世界で最も高価な時計を持っているように感じたものだ。バランスホイールが動いているのを見ることができるということは、一般的に525ドル(日本円で約7万7000円)の価格帯に引き寄せられる新規ユーザーの目を引くものであり、特にほかのパッケージが非常にしっかりしていれば、少なくとも熟練のマニアにとってマイナスにはならないだろう。
ブリュー メトリック オートマティックのデザイン
基本情報
ブランド: ブリュー(Brew)
モデル名: メトリック オートマティック(Metric Automatic Steel)
直径: 36mm×41.5mm
厚さ: 10.75mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤: ブラック
インデックス: バー(ファセット加工)
夜光: あり、針とインデックスの端
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: サテン仕上げとポリッシュ仕上げのSS製、クイックリリーススプリングバー付き
ブリュー メトリック オートマティックのリストショット
ムーブメント情報
キャリバー: NH35A(セイコー製)
機能: 時・分・センターセコンド
直径: 27.4mm
厚み: 5.32mm
パワーリザーブ: 約40~時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 24
クロノメーター: なし
価格 & 発売時期
価格: 525ドル(日本円で約7万7000円)
発売時期: すぐに、8月21日から発送
限定: あり、500本限定
ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)は時計を愛する人物だった。カブ(Turnip)という愛称で親しまれたお気に入りのブレゲの懐中時計をはじめとし、私たちはチャーチルの愛用品の数々を目にしてきたので、そのことをよく知っている。またチャーチルとロレックスの創業者ハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)とのあいだで交わされた、手首のサイズやエングレービングについて記された書簡も見たことがある。のちにウィンストン・チャーチルは、ロレックスによる10万本目のクロノメーターとして、彼の家紋が入ったゴールドのデイトジャストをウィルスドルフ本人から贈られている。
ウィンストン・チャーチル卿は1946年夏、ヴォー州からこの金のレマニアを贈られた。
今週、彼のコレクションにあった時計がまたひとつ判明した。18Kイエローゴールドのレマニア クロノグラフで、これもまたヴォー州から贈られたものである。しかも、この時計はデイトジャストよりも以前のモデルなのだ。この時計はある個人が入手したもので、4月25日にロンドンで開催されるサザビーズの時計オークション、そのロット160として登場する。なお、この時計が特別な理由はいくつかある。
裏蓋の刻印は、これがウィンストン・チャーチルに贈られたものであることを示している。
まず時計全体がゴールドだ。ケースから針、インデックス、そして文字盤にいたるまで、すべてに金メッキが施されている。ほとんどのレマニア クロノグラフが(ほかのメーカーにも供給しているエボーシュムーブメントを搭載しない場合)ステンレススティール製であったのに対して、これは極めてイエロー(ゴールド)が際立つレマニアとなっている。この時計はその点において、まったくの正反対だ。また、プッシャーのひとつが取り替えられていて、しかもその出来があまりいいものでないため、残念ながらこの時計の視覚的なバランスが少し崩れてしまっていることに注意して欲しい。写真でわかるだろうか?
第2に、定評あるクロノグラフムーブメントを搭載している。Cal.CH27-C12は1940年代初頭にオメガと共同開発した手巻きクロノグラフで、オメガはこれをCal.321と呼んでいる。Cal.CH27-C12と聞いてもピンとこない人も多いかもしれない。だがCal.321なら多分聞き覚えがあるはずだ。このムーブメントは数々の時計に使われ、そのなかでも特に月へ旅立ったスピードマスターに搭載されたことで知られている。
この時計はさまざまな意味でユニークだ。18Kイエローゴールドにサーモンの文字盤というのは、当時のレマニアにはあまり見られなかった。
そして最後に、この時計はレマニアの本社兼ファクトリーがあったヴォー州から直々に贈呈されたものである(このファクトリーは1990年代にブレゲに吸収され、今日に至るまで、スウォッチ グループはこの建物を自社の時計製造に使用している)。チャーチルがこの時計を受け取ったのは妻クレメンタインとスイスで休暇を過ごしていたときで、チューリッヒ大学での演説でヨーロッパ統一についてのヴィジョンを語る直前のことだった。
時計の直径は36mmだ。
この時系列を鑑みてか、サザビーズはこの時計がチャーチルが描いた“ヨーロッパの平和と統一”の象徴であると主張している。しかし、この主張については慎重に考える必要がある。というのも、チャーチルがヴォー州を訪れた際に演説を書いたという証拠も、スイスでの体験が演説のインスピレーションになったという証拠も、演説の際に時計を身につけていたという証拠もないからである。いずれにせよこの時計の真の価値は、その象徴性ではなく、その唯一性と出所の確かさにある。
かの有名な“V”サインをするウィンストン・チャーチル。(写真は帝国戦争博物館所蔵)
サザビーズは、この時計の想定落札価格を1万5000ポンドから2万5000ポンド(掲載時点で約1万9000ドルから3万2000ドル、当時のレートで約270万円から約460万円)と見積もっている。このロットは時計愛好家というよりも、ウィンストン・チャーチルの遺品を収集しているコレクターに喜ばれるのではないだろうか。前者の時計愛好家であれば、この時計のコンディション(ケース上部のプッシャー付近に激しい打痕があり、文字盤の4時と5時のあいだに剥離が見られる)を差し引いても、自分の時計コレクションに加えるべき貴重な1本を手に入れたいと思うに違いない。