これはラ・ファブリク・デュ・タンが開発した、まったく新しいムーブメントを搭載している。プラチナケースを採用してモダンなデザインに仕上げたこのヴォヤジャーの新作は、ルイ・ヴィトン初のスケルトン自動巻きムーブメントを載せ、わずか150本と数量を絞って生産される(なお先に言っておくが、こちらのモデルはすでに完売している)。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトン
ルイヴィトンスーパーコピー時計代引きヴォヤジャー スケルトンは、ヴォヤジャー フライング トゥールビヨン ポワンソン・ド・ ジュネーブを生み出したときと同じ発想を受け継いでおり、ベースとなる構造を削ぎ落とした、完全なるオープンワークムーブメントを搭載している。そのためマイクロローターやスケルトンのゼンマイ香箱など、ムーブメントを構成する部品のほぼすべてが鑑賞できる。
それ以外のムーブントの構成要素は、LVロゴに似たモチーフでデザイン。ブルーのミニッツトラックで囲まれ、時刻を表示するために時針と分針をセットするなど、ムーブメント(とその仕上げ)を可能な限り見せるように工夫がなされている。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトン
このブランドの中でも、特にスペシャルな作品にのみ許されるモノコックデザインのヴォヤジャーケースは、直径41mm、厚さは9mmとなっている。両面サファイアクリスタルの採用に、ユニークなラグのデザイン、そしてポリッシュとサテン仕上げ両方の要素をうまく融合させている。
文字盤を形成し、この時計の名刺代わりとなる美観は肉抜きされたCal.LV60である。この新しいムーブメントは2万8800振動/時で、約48時間のパワーリザーブを確保。そしてホワイトゴールドのロジウムメッキがなされたマイクロローターを搭載している。巻き上げは両回転で行われ、5時位置にあるゼンマイ部分が大きく開いているため、パワーリザーブ残量を視覚的に確認することが可能だ。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトンのムーブメント、Cal.LV60
LV60は、接平面に一方向へとブラッシングを施し、エッジには面取り加工をしている。ヴォヤジャー スケルトンをひっくり返すと、ブリッジの裏側に施されたサンドブラスト加工がインダストリアルな雰囲気を醸し出しているのがわかる。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトンは、プラチナ製で150本の限定生産、小売価格は739万2000円(税込、完売済み)でデリバリーされる。
我々の考え
この新しいスケルトンは、これまでヴォヤジャーケース(とその雰囲気)によって実証されてきたオートオロロジー(高級時計)プログラムの延長にあるモデルとしては、十分にわかりやすいものだ。しかもそれ自身が持つ魅力として、ヴォヤジャーラインの中でも複雑ではない(そして安価な)入門的な位置付けとして提供されることは間違いないようだ。仮定としてヴォヤジャー フライング トゥールビヨン ポワンソン・ド・ ジュネーブ(希望小売価格は23万ドル、日本円で約3042万8000円だ)と比較が許されるのであれば確かにそう言えるだろう。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトンのリストショット
正直なところ、僕はスケルトナイズされたムーブメントがあまり好みではないのだが、これはルイ・ヴィトンとラ・ファブリク・デュ・タンがともにここまでつくり上げたものであり、実際にスケルトナイズのレベルが高いだけでなく、ムーブントに残された構成要素のデザインの意図は素直に高く評価したい。その結果、時刻を確認するもそれに夢中になり、目を離したあとに時刻を確認していなかったことに気づくような、そんな細部までデザインされた文字盤を持つ時計のひとつであるように感じる。
プラチナでできた複雑なシングルピースケースのデザインと、ブランドの真新しいムーブメントのあいだで、LVマニアが夢見るような限定モデルであることは間違いないだろう。
ルイ・ヴィトン ヴォヤジャー スケルトンのリストショット
基本情報
ブランド: ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)
モデル名: ヴォヤジャー スケルトン(Voyager Skeleton)
型番: Q7EN1K
直径: 41mm
厚さ: 9mm
ケース素材: プラチナ
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ネイビーブルーのアリゲーターレザーストラップとトリヨンレザーストラップの2本
ムーブメント情報
キャリバー: LV60
機能: 時・分
パワーリザーブ: 約48時間
巻き上げ方式: 自動巻き(マイクロローター)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 29
追加情報: ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンで設計、開発
価格 & 発売時期
価格: 739万2000円(税込)
発売時期: 完売
限定: あり、数量限定150本
ドクサ(Doxa)は先日ニューヨークで開催されたイベントにおいて、小説家であり探検家でもあるクライブ・カッスラー氏との長年の交流を記念した特別仕様の時計を発表した。85冊以上の著作を持つカッスラー氏は、小説の主人公であるダーク・ピットの腕にオレンジ文字盤のサブ 300 プロフェッショナルを装着させ、ドクサのブランド認知に貢献してきた。新しいサブ 300T クライブ・カッスラー エディションは、この出版物の歴史とカッスラー氏が1979年に設立したナショナル・アンダーウォーター・アンド・マリーン・エージェンシー(National Underwater and Marine Agency、NUMA)による沈没船探索の卓越した技術に敬意を表したものである。
このスペシャルエディションは、カッスラー氏のすべてを讃えるかのようにスタンダードなサブ 300Tをベースとしており、サイズは直径42.5mm、厚さ14mm、ラグからラグまでの全長が44.5mmとなっている。今作の開発は2年以上前から始まったものであり、PVD加工によるエイジング仕上げが施されているのが特徴だ。興味深いことに、最大の難関はブレスレット、そしてケースとベゼルの仕上げと一致させることだったという。その結果として使い込まれたガンメタの輝きと、まるで忘れ去られた工芸品のような風合いが生まれたのだ。このドクサはピットが冒険中に無名の沈没船から発見した遺物のようにも思えてくる。
文字盤のデザインもまた特別で、サブ 300Tのいつものレイアウトの上に、エイジング加工された褐色のカラーリングとヴィンテージのコンパスローズを思わせるデザインが施されている。コンパスのデザイン部分には独自の処理が施されていて、光を受けて初めてわかる繊細な仕上がりを実現している。また、1931年7月15日生まれのカッスラー氏にちなみ、日付表示盤の7、15、31は赤く着色された。カッスラー氏は2020年に亡くなったが、父の名前を冠した時計を披露するために息子であるダーク・カッスラー氏がドクサ主催のイベントに出席。彼はNUMA在籍時に冒険を重ねた愛用の750T プロフェッショナルを着用していた。
時計を裏返すと、裏蓋には非常にクールな処理が施されており、NUMAがその活動の過程で発見した72隻以上の沈没船や遺物の名称がエングレービングされているのがわかる。また、素晴らしいことに、このスペシャルエディションの収益の一部はNUMAに寄付される予定だ。
限定品ではないものの、このモデルの各時計には個別のシリアルナンバーが入り(ベゼルスタンドの縁に、ドクサの通常のケースバックに見られるいつものマークと一緒に)、マッチするエイジング加工を施したスティールブレスレットとベージュのNATOストラップが付属して2690ドル(約37万円)で販売される予定になっている。ラバーストラップと、それに合わせたスティール製クラスプ(ラチェット式エクステンション付き)を希望する場合は490ドル(約6万7500円)が追加で必要になる。
今作は全体を通して、カッスラー氏とドクサ、そしてNUMAとのつながりを象徴する大胆かつ非常に特徴的な作品に仕上がっていると思う。僕は今日、早速この時計を見て(撮影して)みて、エイジング加工されたスティールの質感をとても気に入った。ドクサによると、PVD加工を施したのちにストーンウォッシュを施すことでエイジングを表現しているそうだ。ある意味あらかじめ傷がついているようなものなので、傷がつくことを心配する必要はない。
エイジング加工されたスティールの外観と質感だけでなく、文字盤も興味深い。しかし僕としてはプロフェッショナルシリーズらしいオレンジとコンパスのデザインはないほうがよかったと思っている。特にこの時計には、ダーク・ピットの小説を思わせるポイントが少なからずあるのだからなおさらだ。ピットは映画(最近ではマシュー・マコノヒー氏が2005年の『サハラ 死の砂漠を脱出せよ(原題:Sahara)』で演じていた)のなかでも、300 プロフェッショナルを着用していた。しかしながら、カッスラー氏の世界観を1本の時計に凝縮しようとしたときに色から質感、デザインに至るまでこの文字盤はNUMAとの関連性が高く、ほかのブランドでも同じことができるとは考えがたい。
ドクサはこの時計を何本作るか公言していない。だが筋金入りのカッスラーファン(たくさんいそうだ……、彼の本は1億部以上売れている)か、同じく熱心なドクサファンに向けたかなり限定的なプロダクトになるのではないかと思う。通常モデルの300Tに比べて800ドル(約11万円)の値上げとなるため、この点はより顕著になるはずだ。もしこの時計が好みに合っているのであれば、差額はそれほど問題にはならないかもしれない。しかしクラシックなドクサが欲しいということであれば、カッスラーモデルは標準的な300Tより少しばかり高価で、僕の好きなサブ 300と比べても200ドル(約2万7500円)ほど高い価格設定となっている。
Doxa 300t Clive cussler
ただでさえ風変わりなドクサのなかでも、さらに変わった時計だ。膨大な著作との関連性を超えた製品として、僕はこの時計の仕上げや文字盤のエイジング感、カラーリングをとても気に入っている。赤のアクセント(文字盤のカッスラー氏のサイン、ベゼルのマーク、リューズなど)は素晴らしく、この時計はNATOストラップによく似合うだろうと思う。また、上でも言及したように裏蓋はいいアクセントになっており、この時計の外観にマッチしている。
300T クライブ・カッスラーは、すでに確立された方程式を宗教的なまでに忠実に守っているブランドにとって、異質でありながら同時に親しみやすいモデルだ。本稿を読んでいるカッスラーファンを除いて、最初のドクサとしておすすめできるものではないが、事前情報やその後に見たプレス写真でから想像していたよりも僕はずっと気に入っている。
別に僕の300 シーランブラーの着用時間に挑戦させるほど腕に巻くつもりもない(というより、300 カーボンホワイトパールのように僕の心のなかに無断で住みつくだろう)。だが、個性的かつニッチでちょっとした遊び心のある要素の数々は、僕が多くのスペシャルエディションに求めるものであると同時にドクサをドクサたらしめるものとなっていると思うのだ。
基本情報
ブランド: ドクサ(Doxa)
モデル名: サブ 300T クライブ・カッスラー スペシャルエディション
型番: 840.80.031.15
直径: 42.5mm
厚さ: 14mm
全長: 44.5mm
ケース素材: 経年変化を楽しめるコーティングが施されたスティール製
文字盤色: タン(エイジング加工)
インデックス: プリント
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 1200m
ストラップ/ブレスレット: エイジング加工を施したスティール製“ライスビーズ”ブレスレットにベージュのNATOストラップが付属。オプションとしてブラックのFKMラバー製ストラップ、エイジング加工を施したスティール製クラスプ
Doxa 300t Clive cussler
ムーブメント情報
キャリバー: ETA 2824-2
機能: 時・分・秒、日付表示
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 25
価格 & 発売時期
価格: 2690ドル(約37万円)
発売時期: ドクサのウェブサイトおよび販売店にて販売中
このユニークピースに革新的な進化をもたらしたのは、最新鋭の3Dプリント技術とブランドに貫かれる確固とした時計づくりの理念だ。
最新カーボンファイバーケースにみる実用時計メーカーとしての矜持.
デジタル技術の発達によってウェアラブルツールの機能は格段に進化を遂げた。ネットを介したさまざまな情報の収集や、GPSによる位置の把握から移動速度の計測、さらに心臓の鼓動や血圧を検知し、体内の奥深くまで探査の網を張り巡らせる。これに対し、アナログの機械式時計も負けてはいない。大いなる創造力と伝統技術の革新によって、その限界をさらに超えていく。今年発表されたオリスのプロパイロット アルティメーターはまさにその証左だろう。
オリスは2014年に自動巻き腕時計で初めて機械式高度計を搭載した。正確な時間と高度をダイヤルに表示する機能は、パイロットやアルピニストに高く支持され、その独創的な機構と高い技術力は多くの時計愛好家も一目を置く。
新作は3年の開発期間をかけて、このユニークな魅力にさらなる磨きをかけた。シンボルである高度計のスペックを従来の高度4500m(1万5000フィート)から6000m(1万9700フィート)へと向上させ、ケース素材も新開発の軽量カーボンファイバーを採用した。さらにムーブメントも薄型のCal.793に一新し、56時間のパワーリザーブを実現するとともに、ケース厚も前作より1mm薄い約16.7mmに抑えている。
ブラックの文字盤に時分針を幾重にも取り巻く数字と目盛りは、まさにコックピットの計器を思わせ、たとえ航空機を操縦したことがなくても魅せられるだろう。だが操作はいたって簡単だ。
まずは4時位置のリューズを引き出し、赤いリングの表示の高度計を起動する。さらに1段引き出し、リューズ操作で6時の赤い三角形が管制塔などの指示する基準気圧を指すように合わせると、黄色い2本線のポインターが現在地の高度、赤色のポインターが絶対気圧を指す。リューズを1段戻せば、黄色のポインターが自動で現在の高度を示す。
設定はこれだけ。フライトの準備は完了し、いつでもあなたは操縦桿を握って大空へと羽ばたけるというわけだ。
オリス プロパイロット アルティメーター 88万円(税込)。時計の詳細はこちら。
6000mまで表示できるように高度計のスペックが進化した新型のプロパイロット アルティメーター。なお、写真のメートル表示タイプのほか、フィート表示タイプも用意されている。Photo Courtesy ORIS
ダイヤル側の表示はメートルかフィートのどちらか一方になるが、チタン製のスクリューバックケースにメートル/フィート表示換算スケールを施すことでどちらの表示にも対応する。Photo Courtesy ORIS
2時位置のリューズは時刻とカレンダー表示を操作するためのもので、高度計に関するものはすべて4時位置のリューズに集約。独創性だけでなく、ユーザビリティも追求されている。Photo Courtesy ORIS
文字盤の外周に記した高度表示は、白い数字が0〜3900mでひと回りしたあと、2段目の黄色い数字の4000〜6000mに続く。航行時はFL(フライトレベル)が記された赤い三角を6時位置の三角に合わせる。チタンのケースバックはねじ込み式で、メートルとフィートの換算尺が刻まれている。チタンはこのほかベゼルとふたつのリューズにも使われ、いずれもグレーPVDを施し、軽量性と高強度に寄与する。
実用的な自動巻きに機械式高度計を搭載する時計は唯一で、これは高度計をムーブメントに積層する際に巻き上げローターが干渉してしまうためだ。この回避のため、プレートを設け、両者を分離している。
機械式高度計の原理はけっして複雑ではない。メタル製のダイヤフラムが周囲の圧力に応じて変位し、その動きを針に伝える。だが時計の場合、問題になるのが気圧を感知する開口部から湿気が入り、防水性が損なわれることだ。これに対し、オリスは空気を通しても湿気は遮断する独自のPTFE防湿壁を開発し、特許を取得している。
新作ではこうした独自の機構を包み込むケースに、新たなカーボンファイバーコンポジット素材を採用した。これは、ETHチューリッヒ大学(スイス連邦工科大学)から独立した9T研究所とのパートナーシップから生まれたものだ。9T研究所は前例のないカーボンファイバー加工法を開発するため2018年に設立されて以降、宇宙開発や航空機器をはじめ多くの加工品を生み出してきた。オリスはその設立当初から時計のケース開発について協業を打診していたのだ。
こうして選ばれたのは、カーボンファイバーと高分子ポリマーPEKKの複合素材だ。PEKKは化学的にも強く、耐熱性に優れ、両者を合わせることで軽量性と強度を併せ持つ。これまでも複合素材として時計の外装に用いられていた素材だが、プロパイロット アルティメーターが画期的なのはこれをワンピース構造のケースで実現したことだ。ラグを一体成形したケースに、ムーブメントを直接収め、風防とチタンの裏蓋をはめ込む。さらにリューズをセットするという複雑かつ高い精度が求められる造形に加え、気密性も確保しなければならない。これを既存のカーボン成形技術で作るのは難しく、9T研究所は“積層造形と成型”を基にした独自の製造法を生み出した。着目したのは3Dプリント技術だ。
3Dプリントの技術革新は目覚ましく、今や最先端分野はもちろん、建築や医療、食品など非製造業まで広がり、新たな産業革命と呼ばれるほどだ。今回の9T研究所独自のソフトウェアによる3Dプリント技術も複合素材を安定した密度や形状で融合・最適化し、一定の品質で最終製品の量産を可能にした飛躍的な発明である。
3Dプリント技術は時計製造の現場でも今や欠かせない。だが開発時のプロトタイプとは異なり、量産に成功したカーボンファイバーケースは前作より70gも軽い約98gを実現している。なお、カーボンファイバーと高分子ポリマーPEKKの融合プロセスについては技術的なノウハウにかかわるため、明確な回答は得られなかった。
ハイテクな素材や製造プロセスから生まれたにもかかわらず、その表面には木の年輪を思わせるようなパターンが浮かび上がる。積層した素材が生み出す固有の美しさは、3Dプリントによる予期せぬデザインであり、プロパイロット アルティメーターを腕にハイキングや登山を楽しむナチュラリストにも好感を与えるに違いない。そしてサステナビリティにおける3Dプリント技術の可能性も示唆するものとなった。
加工を完璧にコントロールすることで素材のロスをなくし、従来の工法より効率を格段に向上させる。それは“未来のための気候中立型移動”を志向し、新しいデザインと製造工程を提供する9T研究所の活動に沿う。それと同時に海洋環境保全をはじめサステナブルに取り組み、社会貢献をミッションにするオリスの企業理念にも通じ、両者のまなざしは共通の未来に向いている。
来年オリスは創業120周年を迎える。だが歴史を振り返れば、その歩みはけっして平坦ではなかった。1934年に制定されたスイス時計法では、同国内での競争を防ぐために新技術の導入が制限され、オリスは安価な時計製造を強いられた。これに対し、10年にわたる法廷闘争の末、1966年にはついにスイス時計法を覆したのだ。さらに1970年代にグループ傘下になるものの、1982年に当時の経営陣が自社株を買い取り、クォーツウォッチを廃止し、機械式時計のみの製造を選択した。これによってオリスは独立系ブランドとして再起したのである。
そこには“Go your own way(自分の流儀を貫く)”という反骨精神とともに、“Real watches for real people(真に生きる人のための本物の時計)”を作るという揺らがぬ理念が根底に貫かれている。それは武骨さに本当の価値や人間の自由な精神性を宿すプロパイロット アルティメーターも例外ではない。だからこそ、この時計は極めてオリスらしいといえるのだ。
世界中のスウォッチブティックで発売された。これは、私たちが “ムーンスウォッチ狂騒劇”と呼ぶ、1年以上にわたる熱狂の最新作である。しかし、現状の解説の前にこれまでの経緯を整理しておこう。
ムーンスウォッチ第1世代
ニューヨークで行われたムーンスウォッチコレクションの大々的な発表までの道程を追い、タイムズスクエアのブティックを取材し、このバイオセラミック製の時計を手に入れようと待ちわびる多くの人々の熱狂を目の当たりにした。
この時計は販売戦略上オンラインでは購入できないため、人々は待ち望み、そしてどれだけ収集できたか、その功績を称え合った。ムーンスウォッチをコンテンツとしてA Week on the Wristに取り上げ、小誌の2022年ウォッチ・オブ・ザ・イヤーを受賞したことで、私はこのマニアックな時計に対する熱狂の章は閉じたと思った。だが、2023年(ダニエル・クレイグがミッション・トゥ・ネプチューンを着用したことが話題にもなった)、スウォッチは別の隠し球を持っていることを証明した。ミッション・トゥ・ムーンシャインゴールドである。
ムーンシャインゴールド
始まりは2023年2月、スウォッチが一部都市で特別リリースの予告をしたことだった。ロンドン、ミラノ、東京、チューリッヒである。そう、アメリカは含まれない(ニューヨークもだ)ということだった。幸運なことに、HODINKEE Japanの同僚たちが、世界で初めてこの新しいムーンシャインゴールドのムーンスウォッチを手にした人を撮影することに成功した。オメガ独自のゴールドコーティングを施した、クロノグラフ秒針を持ったモデルだ。
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールド
ミッション・トゥ・ムーンシャインゴールドを最初に手にした人 Photo: Masaharu Wada(本誌)
熱狂もいよいよそれで終わりかと思った。しかしそれは間違いだった。ミッション・トゥ・ムーンシャインゴールドは、その後ニューヨークを含む世界各地で発表されたのだ。編集部のマーク・カウズラリッチ(Mark Kauzlarich)がその時計にカメラのレンズを向けたとき、それがまったく同じムーンスウォッチ ムーンシャインゴールドではないことがわかった。この年で3回目の満月を意味する小さな変化、クロノグラフ針に刻印された小さな数字の“3”が盛り込まれていたのだ。「ああ、そうか」、私たちは次のように解釈した。「これは、この日に購入できた人のための特別な時計なのだ」と。
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールド
しかしそれでもまだ終わらなかった。5月に入り、我らがブランドン・メナンシオ(Brandon Menancio)はムーンシャイン第3弾の発売のためラスベガスに向かった。小さな数字で“4”と刻印されていると予想するも、それは安直すぎたようだ。その代わりにピンクムーン(野花が咲きはじめる4月の満月)へのオマージュとして、クロノ針にピンクのラメが施されていた。ムーンスウォッチの月次発表が2023年のテーマになることは、(その当時まだ決まっていなかったとしても)明らかだった。
ムーンスウォッチ
アメリカ・ラスベガスで発表されたピンクムーンのムーンスウォッチ。Photo: Brandon Menancio(本誌)
フラワー&ストロベリー
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールド
ムーンスウォッチ フラワームーン
1カ月の時が流れ、同じクロノ針に、夜咲きする花々が満月の形に見えることにインスピレーションを得たイラストが描かれたモデルがリリースされた。そして先日、世界各地で発表された最新のリリースが、ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ムーンシャインゴールド “ストロベリームーン”だ。そして、これはこれまででもっともクレイジーなバージョンかもしれない。
5月に発表されたものと同様、このモデルもストロベリームーン(イチゴの収穫時期である6月の満月)にインスパイアされたモデルだが、時計に表現する方法はより大胆だ。すなわち中央のクロノグラフ針全体にまるで壁紙のようにイチゴが並んでいるのだ。今年発表されたすべてのモデル同様、この時計は特定の月(この場合は6月のストロベリームーン)に製造され、その事実を証明する証明書が付属する。やれやれ、これはちょっとクレイジーな事件だ。しかしこの時計への注目と興奮を持続させる原動力となっているのも事実である。
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールド
ムーンスウォッチ ストロベリームーン
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールドのペーパー
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールド
ムーンスウォッチについて尋ねてくる知り合いが、私の主な活動領域である時計業界外の人々も含め、どれだけ多いことか。ムーンスウォッチが大衆文化のトレンドに、しっかりと溶け込んでいる証拠でもあろう。最近、あるパーティで友人が、近くのスウォッチストアがムーンスウォッチの発売直前に閉店してしまい、ムーンスウォッチを探す旅に出られなくなったと嘆いていた。私がクルマを購入したとき、ファイナンス部門の担当者は、彼の兄弟がミッション・トゥ・ナントカ(特定の惑星)を探すのに夢中になっていたと話してくれた。ちなみにこの話題を切り出したのは私からではない。
スウォッチ、そしてオメガのいずれも自らムーンスウォッチコレクションに大幅な調整を加える必要はない。魔法のレシピは効き続けている。購入希望者は、それが唯一の方法であることをわかっているから、世界中のスウォッチショップに集まり続ける。2カ月前にもスウォッチスタッフが記録しているように、ローンチ当日にはいまだに多くの人が訪れている。
ムーンスウォッチ ムーンシャインゴールドの列
4月にニューヨークで行われたムーンシャインゴールドのローンチ当日の列。Photo: Mark Kauzlarich(本誌)
このミッション・トゥ・ムーンシャインゴールドのキャンペーンは、ムーンスウォッチと時計コレクションの理想を結びつける方法として私に衝撃を与えた。通常のモデルは入手が難しいかもしれないが(例えば、ネプチューンとか……)、決して限定されているわけではない。労力を惜しまなければ、すべてのモデルを購入することも可能だ。だが、ムーンシャインモデルは有限であり、1カ月のうちその日にしか手に入らない。その日が終わると、その時計はムーンダストの如く塵となり消えてしまう。
ムーンスウォッチ第一世代
新しいストロベリームーンモデルは、この時計がいかにクレイジーな熱狂を呼び起こすかを予感させる。私たちは今、クロノ針にイチゴが描かれている様子を目撃しているのだ。次は、ムーンシャインゴールドの仕様が1本の針だけに限定されることから脱却するのだろうか? しばらく様子を見る必要がありそうだ。今回のリリースでは、もっとも多くの都市と国(スウォッチ的に、基本的にすべての都市と国)が含まれている。まあ、どこでも買えたわけだ。この限定版を購入するためのプレミアムは、通常モデルのムーンスウォッチの価格(日本円で税込3万8500円)よりわずか4400円高いだけだ。
このムーンシャインキャンペーンが今年いっぱい続く保証はないが、少なくともあと数回はこのようなスペシャルローンチを目にすると予想している。そして最寄りのスウォッチブティックに足を運び、売り切れを続出させる人々の需要と興奮が試されることになるだろう。それが次の満月にまた繰り返されるのだ。
これらの新しいムーブメントのなかでも、少なくとも僕たちのあいだで頻繁に飛行機を利用する人にとって最も魅力的なのは、ローカルジャンピングGMT機能を備えた機械式自動巻きムーブメント Miyota 9075である。かつては高級機だったトラベルコンプリケーションを、信じられないほど手の届きやすい価格帯で実現した同ムーブメントを搭載した新しいロリエ(Lorier) ヒュドラ SIIIは、ミッドセンチュリー風のスタイルに競争力の高い信じがたい価格を実現した。
ロリエ ヒュドラ SIII
ニューヨークを拠点とする小さなブランドのロリエは、ロレンツォ(Lorenzo)とローレン・オルテガ(Lauren Ortega)の夫婦が運営している。またヒュドラ SIIIは、(バージョン的に)彼らの最初の腕時計とは程遠いものの、ブランドとして初めてMiyota 9075を使用し、ダイバーズGMTのフォーマットに沿って製造したものだ。これはベゼルが24時間のGMTベゼルではなく、経過時間を計測するダイバーズベゼルであり、200mの防水性を備えていることを意味する。3地点のタイムゾーンを必要としない場合や、むしろ経過時間ベゼルが便利だと思う人(僕もそうだ)なら、このスタイルはダイビングや旅行、その他あらゆるレジャーに最適な機能を提供してくれる。
時計自体のサイズは幅が41mm、厚さは14.6mm(そのうちケースが12.2mmで残りが風防)、ラグからラグまでの長さは46mmだ。クリスタルはヘサライト製(しかもドーム型)で、20mm幅のラグにはドリル加工を、さらに裏蓋は堅牢かつ衛生的で200m潜水用防水を確保している。
ロリエ ヒュドラ SIIIのサイド
ロリエ ヒュドラ SIIIの裏蓋
ロリエ ヒュドラ SIII
ヒュドラ SIIIは、アドミラルティグレーの文字盤と、2色の特殊夜光処理を施したヘサライト製ベゼルを装備した、単一のバージョンで展開する。驚愕の希望小売価格(このまま読み進めて)には、この写真に写っているソリッドなスティール製ブレスレットも含まれている。同ブレスレットにはクイックリリースや工具不要のマイクロアジャストシステムなどはないが、片側にネジが付いているためサイズ調整は簡単に行える。
ダークブルー、ホワイト、レッドの配色は、クールでミッドセンチュリーな美学が反映されている。これは現代のセリカで見られる方法と同じ、ヴィンテージオメガのデザインノートを引用したかのようだ。ヒュドラ SIIIはケースサイドにすっきりと収まるリューズに加えて、ベゼル、24時間目盛り、内側のダイヤルが一連の同心円状を形成。そのケースに見合うだけの適切なダイヤルを備え、スペックの数値から想像したとおりのつけ心地を提供する。
ロリエ ヒュドラ SIIIの夜光
コントラストが強く、鮮やかな赤色のGMT針、時刻表示を囲む24時間リングもはっきりしていて視認性は良好だ。また6時位置に日付表示を備え、文字盤、針といったほぼすべての白い要素に夜光処理を加えている。ロリエはセカンドタイムゾーンとその24時間目盛りにグリーンのC1、ダイバーズベゼルとローカルタイム表示にブルーのBGW9を使用した、2色の夜光をオプションで用意する。ベゼルのマークが細いため、夜光塗料を塗布するスペースはあまりないが、文字盤の処理は非常に明るく、特に24時間リングは長持ちしていた。
この文字盤のもうひとつの魅力は、ドーム型のヘサライトクリスタル越しに見える夜光である。クリスタルのエッジは角度がつけられたボックスカーブを描いており、文字盤の見え方が歪んだりするときがあった。最初は気が散ってしょうがなかったディテールだが、ヒュドラ SIIIを手首に装着して数日ともに過ごしてみると、サファイアクリスタルの時計のほうが好きだと思っていても、この変化が好きになった。
ロリエ ヒュドラ SIII
ヴィンテージウォッチの感触に近い雰囲気を提供するかどうかを目的としているため、ブランドにとってヘサライトクリスタルを選ぶのは意図的なものだ。ブランドはこのオプションを哲学的なものと考えており、公式ウェブサイトにクリスタルに関するページを設けているほどだ。
たしかに傷つきやすくはあるが、さっと磨いて傷を消すことができる(ヒュドラ SIIIにはポリウォッチのチューブと研磨用クロスが付属している)。ヘサライトのもうひとつの利点はサファイアと同程度の反射を起こさずに、ドームのすべてを味わえることだ。実際に手に取ってみると、クリスタルの外観はクリアで非常に素晴らしく、写真撮影のなかでも反射を最小限に抑えられた。
腕に装着すると、フラットリンクスタイルのSS製ブレスレットが、ラグ部分の20mmからクラスプ部分の15.8mmへとテーパーをつけていた。ケースのラグ位置には絶妙なカーブがあり、厚みの調整にひと役買っている。ヒュドラ SIIIはクリスタル付きだと15mm弱の厚さで、決して薄い時計ではないが、特段厚いというわけでもない。ケースの厚さは12.2mmと、NATOに装着してもバランスとプロポーションが美しくまとまるだろう。僕の手首のサイズに合わせたブレスレットだと総重量は132gだった。
ロリエ ヒュドラ SIII
仕上げは、この価格の時計にありがちなシンプルでわかりやすいもので、ブレスレットの表面とリンクの側面はサテン仕上げ、ケースサイドにはポリッシュ仕上げを施している。ベゼルの動作もよく、120クリックの軽量な動作は制限された振動と良好な位置の調整のおかげであまり不満もない。同様に、リューズも見事なまでに仕上げられていてねじ込み動作も簡単。ムーブメントが正確にコントロールできた。
このムーブメントは間違いなく、ヒュドラ SIIIの美しい外観要素以外の最大の特徴だ。前述のとおり、この時計はMiyotaの自動巻きGMTムーブメントである9075を搭載した小規模ブランドの数少ない初期のモデルのひとつである。
僕が書いたGMT関連の記事をほとんど読んでいる人は、ここから先まで読み進められると思うが、トラベルウォッチに詳しくない人はある程度のコンテクストが必要だと思う。できるだけ簡潔に説明しよう。トラベルコンプリケーションウォッチには無数のフォーマットがあるが、今日の伝統的な“GMT”の時計は、ふたつのフォーマットのうちのひとつである。ひとつめは低価格帯で流通しているスタンダードなもので、24時間目盛(通常はベゼル)上の第2時間帯を示す24時間針を、ユーザーが独自に調整できるもの。もうひとつはロレックス GMTマスターIIによって広まったフォーマット(チューダー ブラックベイによってさらに認知された)で、ユーザーがホーム(またはローカル)の時針を個別に調整できるというものだ。
ロリエ ヒュドラ SIIIのサイド
前者は、ホームから別のタイムゾーンを追跡するのに非常に便利(国際電話をするときなど)なため、通称“コーラー ”GMTと呼ばれる。後者は新しいタイムゾーンに到着した際、時刻変更の作業を大幅に簡素化できるため、こちらは“フライヤー”GMTと呼ばれている。フライヤーGMTの場合は秒針を止めることもなく、最上の例としては、午前0時を過ぎて時針がジャンプするたびに日付が前後に更新されることだ。
9075は、自動巻きのMiyota 9015の系譜であり、完全なフライヤーGMT(ローカルジャンピングと日付修正)の機能を提供している。9015は低価格帯のカテゴリのなかで長い実績を誇り、9075は2万8800振動/時(4Hz)で時を刻み、ハック機能、自動巻き(手巻き付き)、約42時間のパワーリザーブを備えている。
ロリエ ヒュドラ SIII
9075のメリットは、小規模ブランドが選択できるほかの多くのムーブメントよりも低コストであるだけでなく、ロリエ(およびその他のブランド)のような小さなブランドに市販ムーブメント、しかもフライヤーGMT機能を提供する非常に数少ないもののひとつであることだ。ETAはCO7.XXXの名称でフライヤーGMTを製造しており、それはミドー オーシャンスター GMT LEなどに搭載されている。しかし僕がミドーを好きなのと同じくらい、もしあなたが低価格帯の優れたGMTウォッチを探しているのであれば、ヒュドラ SIIIは依然として半分以下の価格である。
核心に触れるのが遅くなってしまったが、ロリエは現在、ヒュドラ SIIIを599ドル(日本円で約8万5000円)で販売している(編集注記:初回生産分は完売。次回は8月中旬から下旬のあいだに再入荷の予定)。ブレスレット、風防を磨くためのポリウォッチチューブと研磨用クロス、トラベルポーチ、そしてブレスレットのサイズを調整するためのドライバーを含んでこの価格だ。決して悪くない。むしろ実に素晴らしい。
ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット
比較的新しいムーブメントの信頼性や性能を気にする人のために説明すると、ブローバやシチズンのブランドもこのムーブメントを採用しているし(ミヨタはシチズンの傘下にある)、ヴェールやトラスカ、ボルダー、ゼロスといった小規模ブランドも、新しい時計にこのムーブメントを搭載しているので、ロリエだけがこのムーブメントを使用しているわけではない。さらにこのロリエのサンプルを自分のタイムグラファーにかけたところ、6つのポジションで平均+8.5秒/日という結果だった。これはひとつのデータに過ぎず、5桁半ばの時計にCOSC程度の精度を期待していたわけではなかったが、僕はその計時に感服した。
これらのモデルはどれも一見の価値があるが、競合のほとんどはコストが高いか、あるいは24時間ベゼルを持つ従来の、GMTのレイアウトを優先して形成されているものばかりだ。僕の好みからするとダイバーズGMTの位置づけは、複数の役割を持つ日常的なスポーツウォッチにとって理想的なレイアウトであり、それがフライヤーGMTでもコーラーGMTでも関係はない。繰り返しになるが、3タイムゾーンをトラッキングする場面はあまりないが経過時間のベゼルが大好きなのだ。
ダイバーズウォッチとしての機能と、7インチ(約17.8cm)の手首で不自由なくつけられる汎用性の高いサイジングを備えた、低価格帯のフライヤーGMTカテゴリとして、このロリエはその価格に見合った価値を提供している。セイコー SSKシリーズのGMTの定価よりわずか125ドル(日本円で約1万7000円)高いだけで、より大きく、厚く、防水性が高く、そしてなによりフライヤーではなくコーラーGMTなのである。
ヒュドラ SIIIが傑出しているのは、非常に完成度の高いパッケージでありながら(しかも35ドル/5000円 追加すれば裏蓋に刻印を入れることもできる)、この価格帯での提供を実現するために手を抜いた部分が見受けられない点である。もちろん気になる点を挙げるとすれば、ベゼルの夜光が少し暗いことと、ブレスレットを微調整する際に工具を使う必要があるということぐらい。
ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット
ロリエ ヒュドラ SIII
ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット
価格はともかく、ヒュドラ SIIIは素晴らしい出来栄えかつよく考えられたデザインで、装着感も良好、特に1000ドル(日本円で約14万3000円)以下という、普通ではあまり見られないスペックを有している。あなたがヒュドラ SIIIを購入することについて、僕の予測に1点注意があるとすれば、それは手に入るまで待たなければいけないかもしれないということ。ロリエは小さなブランドだ。特にカジュアルな価格で時計を提供しつつ、しかもそれが特殊かつマニア的な特質であるという事実が多くの愛好家の目に留まれば、ヒュドラ SIIIはさらに多くの注目を集めるだろう。
ヒュドラ SIIIは、9075を搭載したGMTが続々と発表されるなか、注目すべき価格帯で市場に出回ったことで、ほかを圧倒するのは間違いないだろう。GMTマニアたちはとても喜んでいるに違いない。ヒュドラ SIIIは次の冒険のために年間の旅行費用をそのまま残しながらベストが尽くせる、大変素晴らしいツールであるのだ。