より薄く、よりシャープに。新旧「プラネットオーシャン 600m」徹底比較

オメガ(OMEGA)のプロフェッショナル・ダイバーズウォッチ、「プラネットオーシャン 600m(シーマスター プラネットオーシャン)」が、ついにフルモデルチェンジを果たしました。
2005年の初代登場から数え、今回がいよいよ第4世代の到着です。今回は単なるマイナーチェンジではなく、サイズ感、デザイン言語、そして機能面に至るまで、全方位的な進化を遂げています。
それでは、従来モデル(第3世代)と最新モデルを並べて、その変化を詳しく見ていきましょう。
サイズの逆転:小型化と薄型化の達成
まずは腕元にのせたときの印象が最も変わる「サイズ」から。
最新モデル(第4世代): 42mm径 × 13.79mm厚
従来モデル(第3世代): 43mm径 × 16.1mm厚
単純な数字の差は1mmと1mm弱ですが、実際の装着感はこの数値以上に大きく異なります。直径を1mm絞りつつ、厚みを実に2.3mmも削減。これにより、最新モデルは従来よりもずっと軽快で、手首へのフィット感が格段に向上しています。
近年のラグジュアリースポーツウォッチ界隈では「適正サイズ化」の流れがありますが、オメガもこのトレンドに見事応えた形です。13.79mmという厚さは、多くの「300m防水」モデルと遜色ないレベルであり、ダイバーズウォッチとしての存在感を保ちつつ、ラグジュアリー感も高めています。
デザイン哲学の変化:丸みからシャープへ
次に目を引くのが、ケースデザインの造形美です。
従来モデル: 全体的に滑らかで丸みを帯びたフォルム。力強さはありましたが、ややボリューム感が強すぎる印象も否めませんでした。
最新モデル: 1980~90年代のオメガに見られる「マルチファンロン(多角形)」のデザイン言語を復活。ケースやブレスレットに大胆なファセット(切子面)を施し、光の反射を活かしたシャープな印象に生まれ変わりました。
また、ブレスレットとケースの一体化がさらに進み、時計全体が手首に吸い付くような造りになっています。これはまさに現代の「ラグジュアリースポーツウォッチ」の王道をいくデザインといえるでしょう。
機能と構造の進化:排気弁の消滅と無历化
ダイバーズウォッチにとって「構造」は命。ここにも大きな変化がありました。
1. 排氦バルブの撤去
水中での安全性を高めるためのパーツ「排氦バルブ」。最新モデルでは、ケースの耐圧構造の技術進歩により、このバルブが不要となりました。
メリット: ケースサイドがすっきりして対称性が増し、デザイン的にも美しく、引っかかりも少なくなりました。
2. 「無历(ムレキ)」デザインの採用
従来モデルは3時位置に日付窓(历)がありましたが、最新モデルではそれが完全に撤去されています。
メリット: 3時位置のインデックスが独立し、視認性が向上。また、日付窓周りの反射がなくなることで、文字盤全体のコントラストがより鮮明になります。
トレンド: この「無历化」は去年の「シーマスター 300m」に続き、オメガが今後推し進めていく方向性と言えるでしょう。
3. リューズガードの強化
ケースサイドには、意匠的にも美しいリューズガード(王冠保護)が新たに設けられています。これは衝撃からリューズを守るだけでなく、海馬300mや6000m級のプロフェッショナルモデルとのデザイン統一性をもたらしています。
ベゼルデザイン:「クォーターオレンジ」の行方
プラネットオーシャン 600mのファンが最も気にするポイントの一つが、ベゼルのカラーリングです。
従来モデルでは、0~15分の目盛をオレンジ色にした「クォーターオレンジ」が、視認性と美しさの象徴でした。
最新モデルの対応: 今回のリリースでは「クォーターオレンジ」はラインナップされていませんが、純粋なオレンジセラミックベゼルが用意されています。
視認性: ケース径が小さくなり、ベゼル面積が相対的に大きくなったため、オレンジ色の存在感はむしろ増しており、水中での15分間の残り時間の把握はより容易になっています。
裏蓋と機械:至臻天文台の本領
裏蓋は従来通りの実心底蓋ですが、シリーズ象徴である「ヘビクロコ(海馬)」のエンボスが施されています。
内部には、オメガ自慢のキャリバー 8912(デュアルトーブ)が搭載。シリコン製遊丝を備えたこのムーブメントは、15,000ガウスもの強力な磁場にも耐える「至臻天文台(Master Chronometer)」認定を取得しています。
性能: 振動数 25,200振動/時
動力貯蔵: 約60時間
機械的な信頼性と、パワーリザーブの長さも、最新モデルの大きな魅力です。
総括:時代を超えた進化
今回の第4世代「プラネットオーシャン 600m」は、単に「小さくした」だけのモデルチェンジではありません。
装着感: 厚みを約2.3mm削減し、ラグジュアリー感を増加。
デザイン: 80-90年代のDNAを現代的に蘇らせ、シャープな印象に。
機能: 排気弁不要化と無历化により、構造的な美しさを追求。
「ダイバーズウォッチは重厚感が命」という固定概念を覆す、この「軽快さ」と「シャープさ」。オメガは確実に、新たな時代の扉を開けたと言えるでしょう。