3種のセイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデルが登場!

1965年に国産初のダイバーズウォッチを発表したのを皮切りに、1968年には10振動ハイビート300m空気潜水モデル、1975年には世界初のチタンケース600m飽和潜水モデルと、マイルストーンとなる名作を送り出してきたセイコー。そんな同社のダイバーズウォッチの歴史を継承し、ヘリテージデザインに最新技術を取り入れたモデルとして作られたのが、マリンマスター プロフェッショナル、1965 ヘリテージ ダイバーズ、そして1968 ヘリテージ ダイバーズ GMTとそれぞれに際立った個性を持つ、3つのセイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデルだ。

マリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)

 SBDX067は、プロフェッショナルダイバー向けのフラッグシップモデルで、1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルのデザインを踏襲しつつ、機能的には1975年の600m飽和潜水モデルをベースとした過酷な環境に耐えうる仕様となっている。

1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルのオリジナル。上下のラグを鏡面で繋いだ流線型のフォルムが特徴。裏ぶたのないワンピース構造の300m防水ケースに搭載した画期的なモデルで、1970年には日本山岳会の植村直己(※)、松浦輝夫の両氏がエベレスト登頂にこのモデルを携行。今日ではプロテクターつきモデル(1975年)と並んで、セイコーのダイバーズウォッチの代名詞となっている。

※余談だが、エベレスト登頂時に植村直己がつけていたのはこのモデル。1974〜76年にかけて行われた同氏による北極圏1万2000kmの犬ぞりの旅に携行されたのが、いわゆる“植村ダイバー(1970年登場)”だった。

 本作はチタン製ワンピース構造の600m飽和潜水用防水仕様で、その証としてダイヤルに“PROFESSIONAL”の文字が記されている(セイコーのダイバーズウォッチでは、飽和潜水用防水仕様のモデルがプロフェッショナルの名を文字盤に持つ)。ケース内に侵入したヘリウムガスによる内圧上昇で風防が破壊されるリスクを避けるため、飽和潜水対応のダイバーズウォッチではケースに穴を開けてガスを排出するバルブを設けるのが一般的だが、セイコーではそもそもヘリウムガスをケース内に侵入させないという独自の発想のもと、きわめて機密性の高い600m飽和潜水用防水ダイバーズを1975年に開発した。

 本作においてもオリジナルモデルが持つような優れた機密性が確保されているが、従来のデザインではケース表面に配置されていた回転ベゼル固定用のネジを裏面に移動し、より洗練されたデザインとなった。さらにベゼル表示リングにはDLCコーティングを施したステンレススティールを採用し、従来の約6倍の表面硬度を実現している。

 加えて、新開発のブレスレットは、コマひとつひとつに丸みを持たせ、肌に優しくなじむように設計。短いピッチでしなやかに動くことで、抜群のフィット感と快適な装着感を目指した。

 ダイヤルは深海をイメージした深みのあるブルーカラーに精緻な波模様の型打ち装飾を施している。これに加え、新たな試みとしてダイヤル表面を透明な塗料で厚くコーティングし、ていねいに磨き上げることで、これまでのモデルでは表現できなかった奥行き感と艶やかな質感を実現させた。

 そしてムーブメントには新開発のCal.8L45を搭載。セイコー独自のスプロン(Spron)合金を動力ぜんまいに採用していることに加えて、その形状や設計を改良。厳密な精度調整を行うことで、セイコーの現行機械式のなかで最も安定した精度(日差+10秒~=5秒)と約72時間のパワーリザーブを確保した。さらにこのムーブメントは、特別な固定方法でケースに収めることにより堅牢性が強化され、過酷な水中環境にも対応できる設計が取り入れられた。

 深海をイメージした精緻な波模様のダイヤルを採用し、さまざまな技術革新により、洗練された外観とプロフェッショナル向けのフラッグシップモデルにふさわしい性能を備えた本作。世界限定600本(うち国内は200本)で、価格は71万5000円(税込)。裏蓋にはシリアルナンバーが刻印され、2025年7月11日(金)の発売を予定している。

ダイバーズ 1965 ヘリテージ セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDC213)

 本作はモデル名にもあるとおり、1965年に発表されたセイコー初のダイバーズウォッチのデザインをもとにしており、オリジナルの意匠を受け継ぎながら現代的なアップデートが施されている。まずダイヤルには、セイコーダイバーズの象徴でもある“ウェーブマーク”から着想を得たダイナミックな型押しパターンを採用。これは荒々しい海の情景をイメージしたデザインで、光の加減で異なる表情を見せる。

 ケースはオリジナルと同様の比較的シンプルなスタイルだが、ベゼルの表示リングにはグレーの配色を採用することでモダンな印象を演出する。また新開発されたクラスプにより、最大約15mmの調整幅を確保し、6段階でのサイズ調整が可能となった。

 本モデルにはコンパクトな自動巻き機構を特徴とするCal.6R55を搭載。300m空気潜水用防水を確保しつつ、72時間のロングパワーリザーブを備え、日差+25秒~=15秒の精度を実現する。世界限定6000本(うち国内は2000本)で、価格は19万2500円(税込)。5月10日発売予定だ。

1965年に、国産初のダイバーズウォッチとして発売されたオリジナルモデル。コンパクトながら卓越した視認性を備え、当時としては画期的な150mの防水性能や優れた耐久性を実現した。

ダイバーズ 1968 ヘリテージ セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBEJ027)

 こちらは前述のマリンマスター プロフェッショナル(SBDX067)同様、1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルをオマージュし、そこに現代的なアレンジを加えたデザインを特徴とする。

 ダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)同様、ダイヤルは“ウェーブマーク”にイスパイアされたダイナミックな型押しパターンを施し、ブルーグラデーションのカラーリングを取り入れる。300m空気潜水用防水を確保しており、ダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)よりも視認性の高い太めのインデックスと針を備える。

 ムーブメントはダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)の持つCal.6R55と基本的な性能は大きく変わらないが、新たにGMT機能を備えたCal.6R54を搭載する。GMT針を単独で調整できるため、ローカルタイムの変更が容易で、旅行時に実用的な機能を提供する。また本作も新開発のクラスプを備えており、最大約15mmのサイズ調整が可能だ。こちらも世界限定6000本(うち国内は2000本)で、価格は24万7500円(税込)。発売は6月6日を予定している。

ファースト・インプレッション
セイコーのダイバーズウォッチ誕生60周年を記念したこれら3つのモデルは、前述したようにかつてのオリジナルダイバーズにデザインソースを求めつつ、より進化したスペックを持つところが魅力であることは間違いない。だが、筆者にとって印象的だったのは、いずれのモデルもその上で普段使いする際の使い勝手や、実用性に配慮された仕上がりを備えているという点だ。

新開発されたクラスプ。

 たとえば、新開発されたクラスプ。簡単な操作でブレスレットのサイズ調整を可能にしている。最大約15mmの調整幅があり、着用した状態でクラスプを閉じたまま、サイドにあるボタンを両側から押すことで長さが簡単に伸縮。調整の幅は約2.5mmずつ、6段階で行うことができる。これは潜水時の気圧の変化によって受ける影響を緩和するためにサイズ調整を可能にする機能ではあるが、どちらかというとその主眼は、日常生活における腕周りのサイズ変化に対応し、常に快適な着用感が得られるところにあると思っている。なお、SBDX067のクラスプに関しては従来からの仕様で、調整幅30mm、約2.3mmごと13段階と、ウェットスーツの上からの着用を想定しているため調整幅が広い。

 ほかにもマリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)における、回転ベゼル固定用のネジを裏面に移動した構造も、日常での使い勝手を意識したものだ。2015年に発表されたマリーンマスター プロフェッショナル国産ダイバーズウオッチ50周年記念限定 JAMSTECスペシャルモデルと見比べると、よりわかりやすいだろう。

 従来はケース表側に露出していた回転ベゼルが外れるのを防ぐためのネジが、新作ではケースの裏面に取り付けられるように構造が変更されたわけだが、やはり従来のスタイルでは表側のネジが無骨な印象を与える。新作ではそのネジが表側からは見えなくなったため、ずいぶんすっきりとした印象になった。

 さらに印象的なのはダイヤルだ。本モデルは、ダイヤルのベースに精緻な波模様の型打ちを施すとともに、ダイヤルをプレスしてインデックスを立体的に一体成形している(本作は表側からプレスをし、夜光を充填する部分と波模様をへこませている)。ちなみにセイコーのダイバーズウォッチでは、潜水用防水である“DIVER’S XXXm”表記をダイヤルに持つモデルはこのような一体成形のインデックスを持つものが多い(現行モデルに限っていえば、セイコーのダイバーズはすべて一体成形のインデックスを採用する。ただし厳密に言うと、手法としてはプレスとエンボスの両方が存在している)。これは万が一強い衝撃を受けてもインデックスが外れることがない本格的な仕様である。本作はダイヤルに厚い透明な塗料を塗って磨きあげているそうだが、担当者曰く、これが非常に手間を要する工程らしい。そのため、ダイヤルの開発から発売に至るまで約4年もの年月を費やしたという。特別なモデルだからこそ挑戦できた試みといえよう。

 マリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)のみが、ほかの2本と比べて価格設定が高いが、これはもちろんフラッグシップであるという意味合いがあると同時に、開発に長い時間がかかってしまったためという実情も反映してのことのようである。