オメガとオリンピックの関係が時計業界において最も重要であり、最も長きにわたるスポンサーシップ/パートナーシップのひとつであることは広く知られていることだろう。1年と1日後の2026年2月6日、オリンピックは2026 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックとして再び開催される。
この時計は、1950年代から2008年に至るまでのオメガの歴代オリンピックウォッチとつながりを持つ(その詳細については後述する)。“ドッグレッグ”と呼ばれるラグや、ムーンシャイン™ ゴールドのインデックスを備えた端正なホワイトダイヤルはヴィンテージ志向に見えるかもしれないが、ケース径をわずかに大きくした37mm(厚さ11.4mm)など、21世紀の感覚に適応するための細かなアップデートが施されている。またホワイトのグラン・フー・エナメルダイヤルにゴールドのアプライドインデックスを配するなど、オリジナルからのインスピレーションも忠実に取り入れている。
この時計におけるオリンピック関連のブランディングは、ケースバックにある2026 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックロゴのみである。近年ではシースルーバックが一般的になっているが、このクローズドケースバックはオリジナルモデルの仕様により近いものとなっている。裏蓋の下に収められているのは自動巻きムーブメントのオメガ製Cal.8807。このムーブメントは2万5200振動/時で駆動し、約55時間のパワーリザーブを備えている。またMETAS認定のマスター クロノメーターを受けており、1万5000ガウスまでの耐磁性能を誇る。
本作は限定版ではなく、信じられないほど魅力的で手に入れるために貯金を考える価値のある時計であることを考えると、大きなプラスに感じられる。価格は297万円(税込)と決して手ごろではないが、近年の金の価格を考慮すれば、緻密にデザインされた時計としては標準的な設定といえる。
我々の考え
今回の発表は非常に引きつけられる。“知る人ぞ知る”という要素があり、それこそが時計の世界を特別なものにしている。ではその知るべきこととは何か? まず“ドッグレッグ”ラグはオメガのラインナップにおいて象徴的なデザインであり、ドレッシーなシーマスターだけでなくコンステレーションラインにも採用されている。特に1952年、オメガはオリンピックの公式計時に20年間貢献した功績を称えられ、“メリットクロス(Cross of Merit、オリンピックの公式計時に20年間貢献したことを称えられて授与された賞)”を授与された。そして1956年のメルボルンオリンピックではその功績を記念し、オリンピックのブランディングと“メリットクロス”ダイヤルを備えた特別なシーマスターを発表した。
下のモデルを見ると、今回の新作のインスピレーションがどこから来ているのかがよくわかる。2008年、オメガは再び“メリットクロス”ウォッチから着想を得て、北京オリンピックのための限定モデルを発表した。オメガはオリンピックの公式計時を約100年にわたり担ってきたブランドであり、オリンピックの歴史とともに歩んできた存在である。そして、それはこれからのオリンピックの未来にもつながっていく。
私はこの立体的なラグデザインを気に入っている。ケースバンドからラグが落ち込んで再び持ち上がり、そこから幾何学的に下方向へと形作られる。この独特の構造が生み出す切れ目のようなものは、ヴィンテージクロノグラフに見られるスピルマンケースを好む理由と同じで、非常にシャープな印象を与える。またわずかにドーム状になったホワイトのグラン・フー・エナメルダイヤル、クラシカルなシーマスターロゴ、そしてグレーのプティ・フー(コールド)・エナメルで転写されたミニッツトラックで転写されたミニッツトラックが、現代的な信頼性を求める現代の着用者のためのヴィンテージスタイルの時計として、このモデルを非常に魅力的なものにしている。
それとケースプロファイルにも注目する価値があると感じた。このような幾何学的デザインは、まさに1950年代を象徴するスタイルだといえる。そして写真を見る限り、オメガはケースの細部に至るまで完璧に仕上げており、六角形のリューズにまで細心の注意が払われている。時計選びは価格帯ごとにそれぞれの好みがあるものだが、もし2万ドル(日本円で約300万円)未満の価格でエレガントなデザインを持つ現代的な時計を探しているとしたら、このモデルは間違いなく私の候補リストの上位に入るだろう。
Seamaster 37 mm Milano Cortina 2026
基本情報
ブランド: オメガ(Omega)
モデル名: シーマスター 37mm(Seamaster 37mm)
型番: 522.53.37.20.04.001
直径: 37mm
厚さ: 11.4mm
ラグからラグまで: 45mm
ラグ幅: 19mm
ケース素材: ムーンシャイン™ ゴールド
文字盤: ホワイトグラン・フー・エナメル
インデックス: ムーンシャイン™ ゴールド製アプライド
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: アリゲーターレザーストラップ
1965年に国産初のダイバーズウォッチを発表したのを皮切りに、1968年には10振動ハイビート300m空気潜水モデル、1975年には世界初のチタンケース600m飽和潜水モデルと、マイルストーンとなる名作を送り出してきたセイコー。そんな同社のダイバーズウォッチの歴史を継承し、ヘリテージデザインに最新技術を取り入れたモデルとして作られたのが、マリンマスター プロフェッショナル、1965 ヘリテージ ダイバーズ、そして1968 ヘリテージ ダイバーズ GMTとそれぞれに際立った個性を持つ、3つのセイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデルだ。
マリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)
SBDX067は、プロフェッショナルダイバー向けのフラッグシップモデルで、1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルのデザインを踏襲しつつ、機能的には1975年の600m飽和潜水モデルをベースとした過酷な環境に耐えうる仕様となっている。
1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルのオリジナル。上下のラグを鏡面で繋いだ流線型のフォルムが特徴。裏ぶたのないワンピース構造の300m防水ケースに搭載した画期的なモデルで、1970年には日本山岳会の植村直己(※)、松浦輝夫の両氏がエベレスト登頂にこのモデルを携行。今日ではプロテクターつきモデル(1975年)と並んで、セイコーのダイバーズウォッチの代名詞となっている。
※余談だが、エベレスト登頂時に植村直己がつけていたのはこのモデル。1974〜76年にかけて行われた同氏による北極圏1万2000kmの犬ぞりの旅に携行されたのが、いわゆる“植村ダイバー(1970年登場)”だった。
本作はチタン製ワンピース構造の600m飽和潜水用防水仕様で、その証としてダイヤルに“PROFESSIONAL”の文字が記されている(セイコーのダイバーズウォッチでは、飽和潜水用防水仕様のモデルがプロフェッショナルの名を文字盤に持つ)。ケース内に侵入したヘリウムガスによる内圧上昇で風防が破壊されるリスクを避けるため、飽和潜水対応のダイバーズウォッチではケースに穴を開けてガスを排出するバルブを設けるのが一般的だが、セイコーではそもそもヘリウムガスをケース内に侵入させないという独自の発想のもと、きわめて機密性の高い600m飽和潜水用防水ダイバーズを1975年に開発した。
本作においてもオリジナルモデルが持つような優れた機密性が確保されているが、従来のデザインではケース表面に配置されていた回転ベゼル固定用のネジを裏面に移動し、より洗練されたデザインとなった。さらにベゼル表示リングにはDLCコーティングを施したステンレススティールを採用し、従来の約6倍の表面硬度を実現している。
加えて、新開発のブレスレットは、コマひとつひとつに丸みを持たせ、肌に優しくなじむように設計。短いピッチでしなやかに動くことで、抜群のフィット感と快適な装着感を目指した。
ダイヤルは深海をイメージした深みのあるブルーカラーに精緻な波模様の型打ち装飾を施している。これに加え、新たな試みとしてダイヤル表面を透明な塗料で厚くコーティングし、ていねいに磨き上げることで、これまでのモデルでは表現できなかった奥行き感と艶やかな質感を実現させた。
そしてムーブメントには新開発のCal.8L45を搭載。セイコー独自のスプロン(Spron)合金を動力ぜんまいに採用していることに加えて、その形状や設計を改良。厳密な精度調整を行うことで、セイコーの現行機械式のなかで最も安定した精度(日差+10秒~=5秒)と約72時間のパワーリザーブを確保した。さらにこのムーブメントは、特別な固定方法でケースに収めることにより堅牢性が強化され、過酷な水中環境にも対応できる設計が取り入れられた。
深海をイメージした精緻な波模様のダイヤルを採用し、さまざまな技術革新により、洗練された外観とプロフェッショナル向けのフラッグシップモデルにふさわしい性能を備えた本作。世界限定600本(うち国内は200本)で、価格は71万5000円(税込)。裏蓋にはシリアルナンバーが刻印され、2025年7月11日(金)の発売を予定している。
ダイバーズ 1965 ヘリテージ セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDC213)
本作はモデル名にもあるとおり、1965年に発表されたセイコー初のダイバーズウォッチのデザインをもとにしており、オリジナルの意匠を受け継ぎながら現代的なアップデートが施されている。まずダイヤルには、セイコーダイバーズの象徴でもある“ウェーブマーク”から着想を得たダイナミックな型押しパターンを採用。これは荒々しい海の情景をイメージしたデザインで、光の加減で異なる表情を見せる。
ケースはオリジナルと同様の比較的シンプルなスタイルだが、ベゼルの表示リングにはグレーの配色を採用することでモダンな印象を演出する。また新開発されたクラスプにより、最大約15mmの調整幅を確保し、6段階でのサイズ調整が可能となった。
本モデルにはコンパクトな自動巻き機構を特徴とするCal.6R55を搭載。300m空気潜水用防水を確保しつつ、72時間のロングパワーリザーブを備え、日差+25秒~=15秒の精度を実現する。世界限定6000本(うち国内は2000本)で、価格は19万2500円(税込)。5月10日発売予定だ。
1965年に、国産初のダイバーズウォッチとして発売されたオリジナルモデル。コンパクトながら卓越した視認性を備え、当時としては画期的な150mの防水性能や優れた耐久性を実現した。
ダイバーズ 1968 ヘリテージ セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBEJ027)
こちらは前述のマリンマスター プロフェッショナル(SBDX067)同様、1968年に発表された10振動ハイビート300m空気潜水モデルをオマージュし、そこに現代的なアレンジを加えたデザインを特徴とする。
ダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)同様、ダイヤルは“ウェーブマーク”にイスパイアされたダイナミックな型押しパターンを施し、ブルーグラデーションのカラーリングを取り入れる。300m空気潜水用防水を確保しており、ダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)よりも視認性の高い太めのインデックスと針を備える。
ムーブメントはダイバーズ 1965 ヘリテージ(SBDC213)の持つCal.6R55と基本的な性能は大きく変わらないが、新たにGMT機能を備えたCal.6R54を搭載する。GMT針を単独で調整できるため、ローカルタイムの変更が容易で、旅行時に実用的な機能を提供する。また本作も新開発のクラスプを備えており、最大約15mmのサイズ調整が可能だ。こちらも世界限定6000本(うち国内は2000本)で、価格は24万7500円(税込)。発売は6月6日を予定している。
ファースト・インプレッション
セイコーのダイバーズウォッチ誕生60周年を記念したこれら3つのモデルは、前述したようにかつてのオリジナルダイバーズにデザインソースを求めつつ、より進化したスペックを持つところが魅力であることは間違いない。だが、筆者にとって印象的だったのは、いずれのモデルもその上で普段使いする際の使い勝手や、実用性に配慮された仕上がりを備えているという点だ。
新開発されたクラスプ。
たとえば、新開発されたクラスプ。簡単な操作でブレスレットのサイズ調整を可能にしている。最大約15mmの調整幅があり、着用した状態でクラスプを閉じたまま、サイドにあるボタンを両側から押すことで長さが簡単に伸縮。調整の幅は約2.5mmずつ、6段階で行うことができる。これは潜水時の気圧の変化によって受ける影響を緩和するためにサイズ調整を可能にする機能ではあるが、どちらかというとその主眼は、日常生活における腕周りのサイズ変化に対応し、常に快適な着用感が得られるところにあると思っている。なお、SBDX067のクラスプに関しては従来からの仕様で、調整幅30mm、約2.3mmごと13段階と、ウェットスーツの上からの着用を想定しているため調整幅が広い。
ほかにもマリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)における、回転ベゼル固定用のネジを裏面に移動した構造も、日常での使い勝手を意識したものだ。2015年に発表されたマリーンマスター プロフェッショナル国産ダイバーズウオッチ50周年記念限定 JAMSTECスペシャルモデルと見比べると、よりわかりやすいだろう。
従来はケース表側に露出していた回転ベゼルが外れるのを防ぐためのネジが、新作ではケースの裏面に取り付けられるように構造が変更されたわけだが、やはり従来のスタイルでは表側のネジが無骨な印象を与える。新作ではそのネジが表側からは見えなくなったため、ずいぶんすっきりとした印象になった。
さらに印象的なのはダイヤルだ。本モデルは、ダイヤルのベースに精緻な波模様の型打ちを施すとともに、ダイヤルをプレスしてインデックスを立体的に一体成形している(本作は表側からプレスをし、夜光を充填する部分と波模様をへこませている)。ちなみにセイコーのダイバーズウォッチでは、潜水用防水である“DIVER’S XXXm”表記をダイヤルに持つモデルはこのような一体成形のインデックスを持つものが多い(現行モデルに限っていえば、セイコーのダイバーズはすべて一体成形のインデックスを採用する。ただし厳密に言うと、手法としてはプレスとエンボスの両方が存在している)。これは万が一強い衝撃を受けてもインデックスが外れることがない本格的な仕様である。本作はダイヤルに厚い透明な塗料を塗って磨きあげているそうだが、担当者曰く、これが非常に手間を要する工程らしい。そのため、ダイヤルの開発から発売に至るまで約4年もの年月を費やしたという。特別なモデルだからこそ挑戦できた試みといえよう。
マリンマスター プロフェッショナル セイコーダイバーズウオッチ 60周年記念 限定モデル(SBDX067)のみが、ほかの2本と比べて価格設定が高いが、これはもちろんフラッグシップであるという意味合いがあると同時に、開発に長い時間がかかってしまったためという実情も反映してのことのようである。
2023年に発表されたインヂュニア・コレクションが大幅に拡充される年となっています。コレクションには、小径サイズのインヂュニア・オートマティック 35や、ブラックセラミックやゴールドを採用したインヂュニアなど、新たなサイズや素材のバリエーションが広がるラインナップが登場。そのなかでも、個人的に最もIWCらしいリリースと考えているのが、このインヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41です。
パーペチュアルカレンダーとは、うるう年を含む日付を自動で調整する複雑機構のこと。今でこそ一般的なメカニズムとなっていますが、その普及のきっかけを作ったのが、IWCのパーペチュアルカレンダーでした。同社の伝説的な時計技師クルト・クラウス氏 によって開発されたムーブメントは、高い信頼性を誇り、リューズ操作でカレンダー調整が可能とする画期的な仕様。IWCコピー優良サイト1985年に発表されたダ・ヴィンチ・クロノグラフ・パーペチュアル・カレンダー に初めて搭載され、それ以来、このパーペチュアルカレンダーはIWCを象徴する複雑機構のひとつとなっています。
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41とインヂュニア・オートマティック 40
右から新作のインヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41と3針のインヂュニア・オートマティック 40。
1985年にはイエローゴールドケースを備えた Ref.IW9240、2013年にはインヂュニア・パーペチュアル・カレンダー・デジタル・デイト/マンス 01のようなモデルも存在しました。今回のインヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41 は、ジェラルド・ジェンタが手掛けたインヂュニアSLのデザインを継承するケースデザインで登場する初のパーペチュアルカレンダーモデル となります。
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー Ref. 9240(Photo Courtesy: Antiquorum)
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー・デジタル・デイト/マンス 01 Ref. 379201
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41は、直径41.6mm、厚さ13.4mmのステンレススティール製ケースに、鮮やかなブルーダイヤルを採用しています。この印象的なブルーは、2024年末に登場した インヂュニア・オート魔ティック 40と同じカラーですが、ダイヤルに施された市松模様のパターンのサイズや、サブダイヤルの有無によって、わずかに異なる色合いに見えるかもしれません。
ケースはサテン仕上げを基調とし、ブレスレットやベゼルの側面、ベゼル天面の5本のスクリューなど、要所要所に鏡面仕上げが組み合わさることで、洗練されたコントラストを生み出しています。また、ブルーダイヤルに配されたサブダイヤルは中央にサンレイ仕上げが施されており、ダイヤル上のほかの装飾との質感の違いが際立つことで、デザインの奥行きを演出するとともに、高い視認性にも貢献しています。
一般的に、パーペチュアルカレンダーを搭載する時計はケースが厚くなる傾向があります。本作もケース厚13.4mmと、決して薄型とはいえませんが、そのバランスには細心の注意が払われています。IWCのデザイン部門責任者であるクリスチャン・クヌープ氏は、「インヂュニア本来のプロポーションを崩さないようにするため、デザインとエンジニアリングの両面で慎重に調整しました」と述べています。
デザインと着用感の両立のため、まずはムーブメントの選定から行われたといいます。IWCの象徴的なパーペチュアルカレンダーといえば、昨年発表されたポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44に採用されたCal.52616のように、12時位置に北半球と南半球両方の月の満ち欠けを表示するダブルムーンフェイズや、4桁の年表示を配したレイアウトが思い浮かびます。しかし、Cal.52616は大径ムーブメントであるため、必然的にケースサイズも大きくなってしまいます。
Cal.82600はトランスパレントバックを通して鑑賞できる。
そこで、インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41にはCal.82600が採用されました。このムーブメントは、3時位置に日付表示、6時位置に月とムーンフェイズ表示、9時位置に曜日とうるう年表示を配した、より伝統的なパーペチュアルカレンダーのレイアウトを持つもので、2020年に登場したポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 42に使用されているCal.82650 からセンターセコンドを取り除いた仕様です。クヌープ氏によるとこの調整によって0.6〜0.8mmの厚みの軽減につながったといいます。
また、ケースの厚みの視覚的な部分につながる要素としてリューズの位置にも気を配ったそうで、「パーペチュアルカレンダーはモジュールを自動巻きムーブメントに載せる構造になっているため、リューズの位置がオフセンターになりがちです。特にインヂュニアはリューズガードがあるため、リューズが適切な位置にないと違和感が生じやすいのです」。
インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41 をケースサイドから見ると、自動巻きのベースムーブメントはちょうどミドルケース部分に収まり、パーペチュアルカレンダーモジュールはベゼル部分に収まるように設計されています。ムーブメントの配置が適切になるようケース内部の構造が最適化されるなど視覚的なバランスを保つことに細心の注意が払われています。
もちろん、リューズによってすべての操作が可能なため、ケースサイドには調整用のプッシュボタンや穴が一切なく、シームレスなデザインが実現されています。その結果、防水性能は10気圧を確保し、スポーツウォッチとしての実用性も兼ね備えています。また、パワーリザーブは60時間ですが、自動巻きムーブメントであることを考えると必要十分な性能と言えます。これらの要素が組み合わさることで、パーペチュアルカレンダーを搭載しながらも、日常使いに適したバランスの取れたモデルに仕上がっています。
クリスチャン・クヌープ氏とIWCのデザインチームがフォーカスした厚みを抑える設計は、単に視覚的なバランスを整えるだけでなく、着用感にもつながっていました。ケース全体のプロポーションが適切に調整されることで、時計がトップヘビーになりすぎず、手首にしっかりとフィット。さらに、一体型ブレスレットにより重量が均等に分散されるため、長時間の着用でも快適さが維持されます。ケースのサイズや手首の形状によってフィット感には個人差がありますが、こうした細部へのこだわりにより、スポーティなインヂュニアらしい実用性を損なわないように配慮されているのです。
パーペチュアルカレンダーといえば、一般的にドレスウォッチのイメージが強いかもしれません。しかし、近年では一体型ブレスレットを備えたラグジュアリースポーツウォッチのカテゴリでも、ハイエンドメゾンが注力する複雑機構となっています。僕が比較対象として真っ先に思い浮かべたのは、今年、オーデマ ピゲから発表された新型ムーブメントを搭載するロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.26674STです。直径41mm、厚さ9.5mmのステンレススティール製ケースを採用し、価格は10万9300スイスフラン(日本円で約1800万円)に設定されています。
対して、IWCの インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41 は、直径41.6mm、厚さ13.4mmで、価格は562万5400円(税込)です。オーデマ ピゲの新型パーペチュアルカレンダームーブメント Cal.7138 も、IWCの Cal.82600 も、どちらもリューズ操作ですべての調整が行える仕様となっています。ただし、IWCの場合は一度日付が過ぎると後戻りができず、修正するためには時計を一定期間放置するか、IWCに送って調整してもらう必要があります。一方、APの新キャリバーはこの点にも対応しており、自分でより柔軟な操作が可能です。
IWCの価格はAPの約3分の1に設定されていて、そのコストパフォーマンスの高さは際立っています。ブランドの個性、デザインの方向性、着用感やムーブメントの仕上げ、操作性など、何を重視するかによって評価は分かれますが、IWCのこの新作は一体型ブレスレットを備えたラグジュアリースポーツウォッチの中でも、パーペチュアルカレンダーを搭載したモデルとして非常に競争力のある選択肢となっているのではないでしょうか。
今年、同時に登場したインヂュニアのラインナップには、ローズゴールドモデルやブラックセラミックモデルも含まれています。これを考えると、今後も素材違いやダイヤルバリエーション違いのモデルが追加される可能性は非常に高いでしょう。
基本情報
ブランド: IWC
モデル名: インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41 (Ingenieur Perpetual Calendar 41)
型番: IW344903
直径: 41.6mm
厚さ: 13.4mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 10気圧
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール製ブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: Cal.82600
機構: 時、分、パーペチュアルカレンダー(日、曜日、月、うるう年、永久ムーンフェイズ表示)
直径: 30.385mm
厚さ: 7.77mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/ 時 (4 Hz)
石数: 46
クロノメーター認定: なし
追加情報: ペラトン自動巻き機構
ああ、キュビタス…パテック フィリップにとって25年ぶりとなる新コレクションである。その発表がいかに待ち望まれ、また憶測を呼んだかを語るには、“非常に”という言葉すら控えめである。昨年10月に最初の3モデルが発表された際(グリーンダイヤルにスティールケース、ブルーダイヤルにローズゴールドとのコンビケース、そしてプラチナケースにブルーダイヤルを備えたカレンダーモデル、いずれも直径45mm)、キュビタスコレクションが2024年でもっとも物議を醸すリリースとなったのは間違いない。
キュビタスは、パテックが仕掛けた4次元チェスにおける見事な一手だと評価する者もいた。一方で45mmというサイズは大きすぎる上に安直であり、角張ったデザインにノーチラスからそのまま拝借したようなブレスレット、そして個性的なケース形状にもかかわらず専用設計ではないムーブメントを搭載していると批判する声もあった。どちらの立場であろうとも、コミュニティ内で次第に共有されていった共通認識があった。それはどのみち売れるということ、そして間違いなく小型ケースのバリエーションが今後登場するだろう、ということである。
しかし多くの人が予想していなかったのは、最初の発表からわずか5カ月後に、新たな小型化されたキュビタス(複数形はキュビタイ?)が登場することであった。そう、Watches & Wonders 2025に合わせて、ミディアムサイズのキュビタスが姿を現したのである。ケース径はより現実的な40mm、ケース厚は8.5mmとなり、ホワイトゴールド製のキュビタス 7128/1Gと、ローズゴールド製のキュビタス 7128/1Rの2モデルがラインナップされる。従来の大型キュビタスモデルと同様、いずれもサンバースト仕上げのダイヤルを採用し、WGは淡いブルーグレー、RGは同系色のブラウンを組み合わせたカラーリングとなっている。
ダイヤルに合わせて水平のエンボス模様を施した自動巻きCal.26-330 S C/434は、スクエア型のケースバックに収められ、ハック機能を備える。両モデルとも、それぞれの貴金属製ブレスレットが組み合わされ、ロック可能なアジャストメントシステムと、パテックによる特許取得済みの4つの独立した爪で固定されるフォールディングクラスプを搭載する。
7128/1Gおよび7128/1Rの価格はともに1213万円(税込)だ。
我々の考え
小型のキュビタスを望んでいた人々にとっては、“願えば叶う”といったところだろう。それも、かなり早く叶ったようである。このプロダクトラインにおける戦略展開は個人的に興味深い。というのも、通常であればこうしたバリエーションの追加はもう少しあとに行われ、最初の3モデルにある程度スポットライトを当て続けるものだと考えていたからだ。そもそもこの5カ月のあいだに、最初の3モデルは一体どれほど納品されたのだろうか?
物議を脇に置き、純粋にプロダクトとしてこの2モデルを見るならば、小型化によってキュビタスのやや無骨なフォルムに、ほんのりとエレガンスが加わったといえるだろう。おなじみのパテックらしいダイヤルカラーを採用したこの2モデルは、プロダクトとしても所有する時計としても間違いなくより安全な選択肢である。だからこそこれらは少し遅れて登場したのかもしれない。まずは賛否両論を呼ぶ新しいコンセプトで注目を集め、そのあとにこの2モデルを登場させれば、むしろ普通に見えるというわけだ。
パテックは商品説明のなかで“すべての手首にフィットするように設計した”と述べているが、これは元のモデルが大きすぎたことを、ある意味暗に認めているのではないかと思わせる。はたしてこれらがファミリーのなかで、よりドレッシーな存在となるのかどうか…それは、実際に手に取って確かめるしかない。
今後数日にわたってお届けするWatches & Wondersの最新情報にもぜひ注目して欲しい。すべての新作情報は、こちらで随時チェックできる。
基本情報
ブランド: パテック フィリップ(Patek Philippe)
モデル名: キュビタス(Cubitus)
型番: 7128/1G(ホワイトゴールド)/7128/1R(ローズゴールド)
直径: 40mm
厚さ: 8.5mm
ケース素材: ホワイトゴールドまたはローズゴールド
文字盤: 水平エンボス仕上げのブルーグレーまたはブラウン
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ロック機構付きアジャストメントシステム搭載ブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: 26-330 S C/434
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
直径: 27mm
厚さ: 3.59mm
パワーリザーブ: 最小35時間~最大45時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 30
追加情報: ジャイロマックステンプ、スピロマックスヒゲゼンマイ搭載
価格 & 発売時期
価格: 1213万円(税込)
発売時期: パテック フィリップ正規販売店
限定: なし
ブランドの人気モデルレベルソ・トリビュート・スモールセコンドのモノフェイスとデュオフェイスのバリエーションだ。モノフェイスには、18Kピンクゴールド製の新モデルが登場している。ケースと同素材で仕上げられたピンクゴールド製のミラネーゼブレスレットが組み合わされ、エレガンスが際立つ仕上がりだ。一方、トラベルユースにも適したデュオフェイスには、ホームタイム用のダイヤルとしてブラックとブルーの2色が用意されている。これらの新作は、1930年代に誕生したレベルソのオリジナルデザインに現代的なアレンジを加えたものだ。ジャガー・ルクルトはこの唯一無二のレベルソの魅力を、今なお巧みに広げ続けている。
レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド Ref.Q713216J
まずはレベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド Ref.Q713216Jから紹介しよう。この新作は、現在カタログにラインナップされているスティールおよびピンクゴールドの既存モデル群に加わる形で登場したものだ。今回の大きな変更点は、ピンクゴールドのダイヤルにグレイン仕上げを施していること、そして同素材のピンクゴールド製ミラネーゼスタイルブレスレット(スライディングクラスプ付き)が組み合わされたことにある。スペックの詳細は下記に記すが、このモデルのサイズは横27.4mmで厚さは7.56mm、ラグ・トゥ・ラグは45.6mmで、ムーブメントにはジャガー・ルクルト製の手巻きCal.822を搭載し、パワーリザーブは42時間を誇る。
このピンクゴールド尽くしのレベルソ Ref.Q713216Jは限定生産ではなく、価格は642万4000円(税込)となっている。
レベルソ・トリビュート・デュオフェイス・スモールセコンド Ref.Q398847J/Ref.Q3988481
続いて紹介するのは、レベルソにおいて実用的な1本であり、僕のお気に入りでもあるデュオフェイスだ。このモデル最大の特徴は、表と裏にふたつの文字盤を備えていること。つまり“1本でふたつの時計を持つ”ような感覚が楽しめる構造になっている。それぞれのダイヤルに異なるタイムゾーンを表示できるため、たとえば旅先ではケースをくるっと反転させて現地時間に合わせ、自宅の時間を知りたくなったときはもう1度裏返せばいい。
新しいデュオフェイスでは、ブルーとブラックのいずれかのローカルダイヤルを選ぶことができ、裏返せばどちらもシルバーのダイヤルが現れる。
今回発表された2モデルはジャガー・ルクルトの既存コレクションに近いデザインを持ちながら、同一設計のケースに異なるカラーバリエーションを取り入れている。また、それぞれのダイヤルには新しい仕上げが施されており、2025年モデルとして現行品との差別化が行われている。まずはブラックダイヤルのモデル(Ref.Q398847J)を見ていこう。ローカルタイム用にブラックダイヤル、ホームタイム用にはシルバーダイヤルを備えており、後者には24時間表示も加わっているため、AM/PMを取り違える心配もあまりない。
もしブルーのほうがお好みなら、Ref.Q3988481が同様の仕様でありながらローカルダイヤルにブルーを採用している。両モデルともサイズは横28.3mmで厚さが10.34mm、ラグ・トゥ・ラグは47mmで、ダイヤルカラーに合わせたカーサ・ファリアーノのデザインによる交換用ストラップが付属する。ムーブメントはいずれもジャガー・ルクルト製の手巻きCal.854を搭載しており、42時間のパワーリザーブを備えるほか、デュアルタイム表示と24時間表示に対応している。
これら2本のスティール製デュオフェイス・スモールセコンド(Ref.Q398847JおよびRef.Q3988481)はレギュラー展開されており、いずれも価格は212万9600円(ともに税込)となっている。
我々の考え
レベルソには、誰もが抗えない何か特別な魅力がある。そこにジャガー・ルクルトの確かな時計製造技術が加わることで、レベルソは時計界において唯一無二の体験を提供してくれる(僕自身も、そう感じているひとりだ)。
今回の新作は既存のレベルソコレクションのフォーマットを拡張したような位置づけではあるが、どちらのモデルもとてもよく仕上がっていると思う。個人的にレベルソにブレスレットを組み合わせるという発想が大好きだし、そこにあの美しいグレイン仕上げのダイヤルが加わることで、18Kローズゴールドの新しいモノフェイスは非常に魅力的な1本に仕上がっている。もちろん価格もなかなかのものだが、見れば納得、というやつだ。
そしてデュオフェイスについてだ。どちらのバリエーションもとても好みだが、僕はたぶんブラックダイヤルを選ぶだろう。裏面のシルバーダイヤルとのコントラストがより映えると感じるからだ。1本の時計で、まるで2本の時計を持っているかのような構成。それでいて見た目はシンプルでドレッシー。機能的でありながらエレガントで、そこにはさりげない華やかさもある。そんな絶妙なバランスこそが、この時計の魅力だと思う。
2025の最新情報は、今後数日間にわたって引き続きお届けする予定だ。新作情報をチェックするなら、こちらをお見逃しなく。
基本情報
ブランド: ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)
モデル名: レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド(Reverso Tribute Monoface Small Seconds)
型番: Q713216J
直径: 27.4mm
厚さ: 7.56mm
全長: 45.6mm
ケース素材: 18Kピンクゴールド
文字盤色: ゴールド(グレイン仕上げ)
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット: スライディングクラスプ付き18Kピンクゴールド製ミラネーゼブレスレット
モデル名: レベルソ・トリビュート・デュオフェイス・スモールセコンド(Reverso Tribute Duoface Small Seconds)
型番: Q398847J(ブラック&シルバー) / Q3988481(ブルー&シルバー)
直径: 28.3mm
厚さ: 10.34mm
全長: 47mm
ケース素材: スティール
文字盤色: ブラック&シルバー/ブルー&シルバー
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット: カーサ・ファリアーノ製のカラーコーディネートされた交換用ストラップ2本、インターチェンジャブル仕様のダブルフォールディングクラスプ付き