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特に356 フリーガーは40mmを切る小径のクロノグラフウォッチとして評価が高い1本だ。1996年に日本限定で販売された手巻きクロノグラフ(ちなみに300本限定)に端を発するもので、同作の大成功を受ける形で1998年より自動巻き化(当時はETA社製のCal.7760を搭載)をしてレギュラーに加わった。256 パイロット・クロノグラフから回転ベゼルを取り払ったスリムで洗練されたデザインは、実用的なツールウォッチを求める愛好家に長らく愛されてきた。1994年にリリースされたIWCのメカニカルフリーガークロノにも通じるところがあるが、1994年にIWCのエンジニアであったローター・シュミット氏が経営を引き継いだところにその要因があるかもしれない。そして2023年に、356 フリーガーはレギュラー化から25周年を迎えた。ジンはその記念すべき年に、“356”の名前を冠しつつもまったく新しい356 フリーガー・クラシックJUBをリリースする。
356 フリーガー・クラシックJUBでジンは、ツーカウンターをバイコンパックスで配置した。マットな仕上げのアンスラサイトダイヤルにシルバーのスモールセコンドと30分積算計が並び、その上をシリンジ針の時分針、およびクロノグラフ針が回る。従来の356 フリーガーと同じフォントを踏襲したインデックスは夜光塗料のプリントで表され、12時位置に移動したブランドロゴはアプライドになることで特別感を強調しているように見える。なお、ミニッツトラックにはクロノグラフ使用時に4分の1秒を計測できるよう目盛りが加えられた。
ケース径は38.5mmで厚さは15mm、リューズの形状に沿ってせり上がるようなリューズガードやドリルラグなど、ケースについては従来の356 フリーガーと変わらない。表面のサンドブラスト仕上げも同様だ。レギュラーモデルでは強化アクリルを使用しているハイドーム型風防は、両面に無反射加工を施したサファイアクリスタルに変更が入り(既存モデルでも356.SA.FLIEGERや356.SA.FLIEGER.IIIなどはサファイアクリスタルを使用)、より高い視認性と高級感を演出している。なお、今作ではケースバックもサファイアクリスタルになった。ムーブメントはセリタのSW510で、裏蓋側から駆動する様子を見ることができる。
ストラップはボア(イノシシ)革を使用した耐久性に優れるヌバックレザー製で、グレーとサンドカラーの2本が付属し、ジンオリジナルの工具とともにスペシャルボックスに格納される。価格は税込72万6000円で、2023年秋ごろの発売を予定している。
ファースト・インプレッション
356 フリーガーといえば、12時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンド、6時位置に12時間積算計を備えた縦3つ目のサブダイヤルが印象的だ。さらに3時位置にはブランドロゴとデイデイト表示が配され、直径38.5mmのなかにさまざまな要素がギュッと凝縮したような顔立ちは、これまでダイヤルの仕上げに変更がありこそすれ大きく手が入ることはなかった。しかし、ジンのインストゥルメント ウォッチを代表するモデルの25周年にあたり、ブランドは新たなデザインとしてバイコンパックスを選択した。初めてリリースに目を通したとき、356 フリーガーを愛用するひとりであるがゆえに、何度か型番が正しいかを確認したりもした。
過去にも、ジンはバイコンパックスのクロノグラフを手掛けている。ソリッドベゼルに60分積算計を備えた936や、分厚いブラックベゼルが特徴的な158などだ。その事実だけを見れば、すでに安定した人気を獲得している356 フリーガーの名前で定評のあるデザインを乗せただけのようにも思える。だが、356 フリーガー・クラシックJUBと、936、158を見比べると目指す方向性が大きく異なることがわかる。936、158のケース径はともに43mmで、時分針は視認性を重視したソード針とバトン針。クロノグラフ針と3時位置の積算計にはパッと目に入る赤を使用し、とにかく(ジンらしく)プロツールとしてのパイロットクロノグラフを追求しているように見える。一方、今回の新作は柔和な色合いのアンスラサイトに馴染みよいシルバーのサブダイヤルを採用しており、強い主張はなく上品だ。ケースは前述のとおり従来の356 フリーガーを踏襲しており、どちらかというとクラシカルでノスタルジーを感じさせる見た目になっている。
少し話を戻すが、1996年にリリースされた356 フリーガーの日本限定モデルがあれほど受け入れられたのはなぜなのだろう。そこにあったのはパイロットウォッチとしての実用性を求める声ではなく、クラシカルで象徴的なフリーガーデザインをデイリーにつけたいという欲求ではないだろうか(実際、僕もそうだ)。正直、あの凝縮感のあるダイヤルは、メガネなしでは読み取りにくいこともある。ジンのメンズモデルで356 フリーガーと並ぶ小径モデルは3針の556や一部のクラシックシリーズぐらいで、そこにはブランドの視認性に対する強迫観念に近いプライドがあるようにも思える。つまるところ、356 フリーガーが担う役割は別のところにあるのではないか、ということだ。
ゆえに、既存のバイコンパックスデザインを取り入れながらも、356 フリーガー・クラシックJUBはまったく新しい狙いを持ったモデルであると考える。モデル名とダイヤル上の“KLASSIK”は、このモデルがノスタルジーと文字通りクラシカルさを強調したクラシックシリーズに属することを示すものである。356 フリーガーという懐古的なデザインを落とし込みやすいプラットフォームで新たな試みを行うにあたって、ジンは1940年代ごろのレトロな空気をバイコンパックスで取り入れつつ、初代356登場時に人々が感じたエレガンスを再表現したかったのではないかと思うのだ。
散々既存の356 フリーガーへの執着も書いてきたが、意表をつかれただけで僕自身はこのデザインが大好きだ。ラグ幅も20mmなので、手持ちの356 フリーガーのメタルブレスと付け替えた際にどのような顔になるか、大いに興味がある。NATOストラップとの相性もきっといいだろう。なお余談だが、356 フリーガー・クラシックJUBと同タイミングで、バイコンパックスでアンスラサイトからブラックへのグラデーションを配した356フリーガー・クラシック AS.Eと、白文字盤にブラックのサブダイヤル(パンダだ!)を備えた356 フリーガー・クラシックWを発表している。どれもジンらしいカラートーンで、ジンのインストゥルメント ウォッチファンには刺さるものだろうと思う。
なので、38.5mm径でバイコンパックスを表現したことで、手首の上でどう見えるのか。既存の356 フリーガーと並んだ際の印象の違いはどうか。既存の356 フリーガーから30万円ほど価格が上がる理由はどこにあるのか。そもそもなぜ、356の新たな表現としてバイコンパックスを採用したのか……。いちジンファンとして、そのあたりについては実機を手にしつつ今後お伝えできればと思う。
基本情報
ブランド: ジン(Sinn)
モデル名: 356 フリーガー・クラシック JUB(356.FLIEGER.KLASSIK.JUB)
直径: 38.5mm
厚さ: 15mm
ラグ幅: 20mm
ケース素材: サンドマット仕上げのステンレススティール
文字盤色: アンスラサイト
インデックス: プリントのアラビア数字、アプライドのブランドロゴ
夜光: インデックスと針に夜光塗料
防水性能: 10気圧防水(DIN8310準拠)
ストラップ/ブレスレット: ヌバック・ボアレザー製ストラップ(グレーとサンドカラーの2色が付属)
時計本体、替えストラップ、予備のバネ棒にバンド交換用工具が収められた特別仕様のボックス。
ムーブメント情報
キャリバー: SW510
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(30分積算計)
パワーリザーブ: 約56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
耐磁性能: 4800A/m(DIN8309準拠)
石数: 27
クロノメーター: なし
価格 & 発売時期
価格: 72万6000円(税込)
オーデマ ピゲは、“ジャンボ”によってそのデザインを困難な場所へと追い詰めてしまうかもしれないが、その代わりに、アイコンを基に新しいことをする方法を探し続けている。
ロイヤル オークに飽き飽きしているのはわかる。ただ時計がユビキタスな存在として広く普及しているにもかかわらず、これがもどかしくも触れることのできない地位を維持しているのには、さまざまな理由がある。私のようにすべてのロイヤル オークの母、“ジャンボ” エクストラシンに目をつけているなら、なおさらもどかしい気持ちだろう。オーデマ ピゲが毎年欠かさず発表している、数多くのバリエーションに寄せられるコメントを見ると、正直言って笑ってしまう。“ほかにロイヤル オークにうんざりしている人はいないか?”。そう感じたのはあなたが初めてではないし、ましてやそれについてコメントしたのもあなたが初めてではない。しかし、ロイヤル オークのすべてのリリースをすぐに否定することは、その過程でかなりクールなものを見逃していることが多い。
16204BA
これはかなりクールだろう?
信じて欲しいのだが、私も昔はあなたと同じだった。確かに、心の底に嫉妬心もあったかもしれないが、それ以上に当時騒がれていたような“単純さ”に抵抗したかったのだ。もてはやされなくとも、誰にとっても意味のあるデザインではない。評価が両極端に分かれる時計だ。しかし、ジェンタがデザインしたスポーツウォッチの典型的なモデル(ジャンボや、パテックから発売された“ジュネーブジャンボ”など)が、世界で最も快適かつエレガントに着用できるスポーツウォッチのひとつであることは、私にとって否定できない事実だ。
15202BC
15202BCが、最も人気のある2針のモダンジャンボのひとつになったのには、シンプルな理由がある。それはつけ心地がよく、文字盤が美しいからである。Photo: James Stacey
どちらの時計も相対的に薄いため、その薄さとバランスが、私を高級時計製造最大の特徴のひとつであるという考えへと転換させた(繰り返しになるがロイヤル オークの39mm×8.1mmというジャンボサイズについて伝えておく。それ以外のサイズの2針モデルはほぼ認めない)。しかしそのデザインを“理解”するためには、残酷なまでに美しいジュウ渓谷の風景へと目をやる必要があった。また非常に象徴的な時計なため、理論的には人々が知っていることや愛していることから逸脱することなく改良を加えることは比較的難しいはずである。それなのに、なぜかオーデマ ピゲはそれを可能にするから、私は何度もファンになってしまうのだ。
ロイヤル オークの誕生50周年から1年が経過した。1週間ほど前のオーデマ ピゲのリリースでは、39mm×8.1mmというバランスの取れたパッケージに手を加えず何ができるか、ふたつの例が示されていた。新しい“ジャンボ” エクストラシンはそれぞれ印象的だったが、シェイプやサイズをアイコニックにすることにこだわると、どんなことができるかを示す例でもあった。そのパッケージとそこに収められたラインナップを、どのように反復するのだろうか?
16202XT
写真を見ると、サテン仕上げとポリッシュ仕上げされたチタンケースの新作の16202XTは、最近の記憶で最も気に入らないダイヤルを持つジャンボ ロイヤル オークのひとつだった。このように記憶に残る、よく知られたデザインであれば、ダイヤルは本当に明暗を分けることがある(15202BCと16202BCは、典型的な文字盤デザインの完璧な例だ)。16202XTにはスモークバーガンディダイヤル、サンバースト仕上げ、そして18Kピンクゴールドの時・分針とインデックスが施されている。文字盤をこれほどまでに派手にやってしまうのは、ロイヤル オークの最も優れた部分のひとつを損なう行為であると同時に、ケースそのものが際立ったデザイン要素であるべきだと確信させた。
矛盾するふたつのことを同時に両立させている。問題は、それが気に入るかどうかだ。
16202XT
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実際に見てみると、16202XTの印象的な赤いダイヤル(のディテール)に気づく。手に取ったあとも私のお気にいりには入らなかったが、ラインナップにバリエーションが加わったことは確かで、近年私が覚えているよりも多くの変化を加えようと努力しているように見える。柔らかい光の下だとサンバーストはそれほど目立たなかったが(ポータブルライトボックス下のマクロ写真ではほとんど消えていることにお気づきだろう)、特定の角度によっては飛び出しているかのように見える。細かいことを言えば、赤いカレンダーホイールは、“オンブレ”効果がちょうどブラックフェードし始める場所にあるため、カラーマッチはうまく機能していない。
16202XT
しかし、文字盤から気をそらすとすぐにカッコいいベゼルとブレスレットに目が行く。どちらも、ほかのAPのコアモデルでは見られないレベルのポリッシュ仕上げが施されている。というのもその2カ所と裏蓋の周辺、およびポリッシュ&サテン仕上げのBMG(バルク メタリック ガラス)ケースバックとフレームに使用されている素材が、ガラスでできているからだ。
16202XT
つまりバルク メタリック ガラスが採用されている。オーデマ ピゲはパラジウムベースのバルク メタリック ガラスを2021年のOnly Watch、15202XTで初めて使用したが、BMG自体は1960年代から存在しており、マイクロエレクトロニクスやゴルフなどで使用されてきた。新しい16202XTにも同じ合金が使われているのだ(裏蓋の“Titane”の刻印の下にPd500というホールマークがある。これが証だ)。しかし確かに、これはちんぷんかんぷん(mumbo-jumbo – ダジャレを意図したものではない)だ。では、何を意味するのか?
16202XT caseback
16202XT bracelet
金属を冷却すると結晶が形成され、状況によってはメテオライトで見られるような驚くべきパターンが現れる。金属は冷却速度が速いほど結晶が小さくなり、密度が高くなる。十分に冷却すれば、結晶はまったく形成されない。その代わり、結晶性のないアモルファス内部構造(原子や分子が不規則に密集した状態)が得られるが、それは定義上、実際にはガラスであり、信じられないほどの硬度と輝きを持つガラスとなるのだ。
16202XT
これのメリットはずばり、ロイヤル オークの主要な問題のひとつであるベゼルの傷つきやすさを、硬度が打ち消してくれるということだ。もちろん、どんな時計でも最初についてしまった傷は目も当てられなくなる。特にRO(ロイヤル オーク)のベゼルは非常に洗練されているため、どんな傷も本質的に大きな傷跡となり、見ずにはいられなくなる。まあ、どうやらほかの16202(同じCal.7121を搭載)に比べればかなり高価ではあるものの、新素材の採用により問題は回避しやすくなったようだ。価格は9万6400ドル(日本円で約1425万円)もするが、傷が付きにくい“ジャンボ”を安心して手に入れることができる。ただでさえ手に入らないスティール製の16202よりも入手は困難だろう。
16204BA
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もうひとつ、18Kイエローゴールドの新しい“ジャンボ” エクストラシン(16204BA)は、昨年のSSとローズゴールドの発表に続くポスト50周年のラインナップに、もう1型のオープンワークモデルとして加わった。10万3000ドル(日本円で約1525万円)というこの価格は、新しい貴金属製のオプションと16202XTとの差はそれほど大きくないが、それでも、税込で434万5000円という“ベーシック”なSS製の16202とは次元が異なる。こちらの場合はハイテクな科学素材の代わりに、スケルトナイズされたマスタークラスを手に入れることができるのだ。
ケースはジャンボを非常にウェアラブルにしたものと同様、39mm×8.1mmで展開。ただ昨年発表されたPG製オープンワークダイヤルの16204ORでは、文字盤の隙間部分にコントラストをつけるべくブラックサテンのブリッジの格子を使用していたが、新しい16204BAでは、ブリッジの全面にゴールドを採用している(後方から見える部分を除く)。これらのゴールドは、ヴィンテージ時代への回帰を感じさせてくれる。
16204BA
16204BA
16204BAの内部には超薄型の自動巻きCal.7124が収められている。これは今まで見てきた16202XTや、ほかの16202に搭載されたCal.7121ムーブメントと並行して設計されたものだ。1967年からジャンボに搭載されていた2121/20ムーブメントが終焉を迎えたあと、確かにアップグレードの時期が来ていた。約55時間のパワーリザーブを備えた2121は、ブランドが今後55年間使用することを選択した場合、確実に信頼性の高い改良であることが証明されるだろう。7121の仕上げは素晴らしく、オリジナルの16202STは特によかったが、Cal.7124のオープンワークは最高だ。
16204BA
ブリッジの配置は考え抜かれているようで、素晴らしい円の構造をとおして、ムーブメントの機能部分を強調している。ローターからは“50th”(フォントがNASCARレースのブランディングを連想させていた)が消え、この時計はより洗練されたものになった。
今年の新作発表をひと足早くプレビューしているところだ。詳細はまだ公開できないが、例年どおりフォーラムの開幕に合わせて新作が登場した。今年は、限定エディションのクラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー “ナイト ナビゲーション”がその幕開けを飾る。
Nomos Campus
昨年のフォーラムで大きな議論を呼んだ、日付窓がふたつも設けられていたタンジェント 2デイトの発表を覚えている方もいるだろう。しかし今年発表されたすべての新作には、幸いにも日付窓は一切存在しない。その代わりに登場したのが、今年高い評価を得たクラブ・スポーツ ワールドタイマーのシルエットをもとにした新作であり、3種類の超サイバーパンク(編注;近未来のディストピアを舞台としたSFのサブジャンルを意味する)なカラーリングで展開されている。
その名前は、外観に劣らずエッジの効いたグリッド、トレース、ベクターの3つ。ノモスは、航空機のコックピット計器や夜間飛行中に見下ろす都市の光景からインスピレーションを得ている。3つのモデルはいずれもサンレイ仕上げとブラック ガルバニック仕上げを施したダイヤルをベースに、コントラストの高いアクセントカラーをそれぞれにあしらっている。グリッドはオレンジをテーマに、エクリュ(編注;淡いベージュ色)カラー文字のブラウンのシティリングを装備。トレースはターコイズブルーを基調とし、ベクターはライトイエローのエクリュカラー文字をアクセントにオリーブのシティリングを備えている。いずれのモデルにも共通して、ホームタイムを示す24時間表示インダイヤルの針を備え、鮮やかなオレンジを現在地を示すダイヤル上部の小さなインジケーターにあしらっている。さらに、ミニッツトラック上の目盛りにより、ダイヤル上に記された都市のいずれに対しても時差を計算できるようになっている(サマータイムを除く)。
Vector Worldtimer Table
クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー ベクター。
Yellow Dial Closeup
Nomos Grid Closeup
グリッド。
これら3つのダイヤルはノモスの基準からするときわめて異例のデザインだが、それ以外は今春発表された8色展開のクラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーと同一だ。ステンレススティール製ケースの直径は40mmで、クラブシリーズにとって新たなショートタイプのラグデザインを採用。ケース厚はわずか9.9mmと、驚くほどスレンダーに仕上げている。ねじ込み式リューズのチューブ部分には、リューズを緩めたときにのみ現れる赤いリングを設けており、100m防水の密閉状態が保たれているかを確認できる仕組みとなっている。
Crown Unscrewed
Caseback shot
Yellow On Wrist
この優れた装着感を支えているのが、今年新たに登場した完全一体型のワールドタイム ムーブメント、自動巻きCal.DUW 3202だ。ノモス自社開発の脱進機構であるノモススウィングシステムを搭載し、パワーリザーブは42時間を確保している。
クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーの新作3モデル、グリッド、トレース、そしてベクターはいずれも各175本限定で、価格は77万2200円(税込)だ。
我々の考え
ノモスが新作であるクラブ・スポーツ ワールドタイマーを発表したのは、そう遠い昔のことではない。それだけに初回モデルからわずか半年で、この3色の限定モデルが登場するとは正直驚かされた。
率直に言えば、ノモスのチームは春のフェアで発表した6種類の限定カラーモデルがこれほど人気を集めるとは想定していなかったのだろう。それも無理はない。クラブ・スポーツ ワールドタイマーは、ノモスの通常ラインナップよりも明らかに高価格帯に位置するモデルだからだ。6色×175本、さらに通常カラーの2モデルを加えれば、相当な生産数となる。それでも、世界の正規販売店にごくわずかに在庫が残っている可能性を除けば(実際、イタリアの販売店で偶然見つけたという報告もオンラインで散見される)、6種類の限定カラーモデルはいずれも完売している。4月に発表されたモデルについても同じことを言ったが、今回もあえて繰り返したい。この価格帯(全体的な値上げの影響で、4月のモデルに比べてわずかに上昇している)においても、クラブ・スポーツ ワールドタイマーは依然として価値ある選択肢と言える。堅牢なGADA(編注;Go Anywhere, Do Anything/どこへでも行けて、何でもできる)スペック、そして完全自社製で完全一体型のワールドタイム ムーブメントを考えれば、その評価は揺るがない。
Blue Wristshot
トレース。
Yellow Dial Closeup Bottom
Blue Dial On Tray
したがって、今回これほど早いタイミングで新たな3モデルを投入したのは、依然として続く高い需要を逃さず取り込むための戦略と言えるだろう。もっとも、そのダイヤルデザインは、最初の6モデルとは“昼と夜ほど”の違いがある。実際に手に取って見ると、ブラックダイヤルに高彩度のアクセントカラーを組み合わせたコントラストが、レンダリング画像以上に鮮烈な印象を与える。ただし、反射防止コーティングの影響で、光の角度によってはダイヤルが青みがかって見えることもある。いずれにせよ、これらは間違いなく、実物を目にしてこそ真価がわかる時計だ。
個人的にこのなかで最も引かれたのはベクターだ。当初はオレンジのグリッドがお気に入りになると思っていたが、実際に見るとグリーンがかったイエローのアクセントをあしらったベクターは、ほかの2モデルほど強く主張しない。そして特筆すべきは、ケースに備えられたワールドタイム用プッシャーの操作感だ。これは、ウォッチメイキングの世界でも屈指の満足感をもたらす体験と言ってよい。
Yellow Wristshot on leather
ワールドタイマーのダイヤルデザイン(そしてその複雑機構)は、一見するとノモスの礎となっているバウハウスの理念と相反するように思える。だが、今回の3モデルにおける配色(そしてその背後にあるインスピレーションの物語)は、さらにその枠を大きく踏み越えている。ノモスに対してこの言葉を使うとは思わなかったが、この3つの“ナイトナビゲーション”は、これまでの同ブランドには見られなかったタクティクールなデザインだ。そして、ふっと考えてしまう。ブランドが成長し、新たな領域へと進化していくうえで、ブランドが新しいことに挑戦する際、あのインスピレーションを手放すことはもしかすると避けられないことなのだろうか?
これらの新作は、これまでノモスのデザインに共感できなかった層を確実に引きつけるだろう。となれば、次にベルリンのデザインチームがどの方向へ舵を切るのか。それこそが、今後注目すべきポイントであろう。
基本情報
ブランド: ノモス グラスヒュッテ(Nomos Glashütte)
モデル名: クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー ナイトナビゲーション(Club Sport neomatik Worldtimer Night Navigation)
型番: 790.S7 (トレース)、 790.S8 (グリッド)、790.S9(ベクター)
直径: 40mm
厚さ: 9.9mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: カラーアクセント付きのガルバニック加工が施されたブラックダイヤル
インデックス: プリント
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: SS製のクラブ・スポーツブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: DUW 3202
機能: 時・分表示、スモールセコンド、24時間のホームタイム表示、ワールドタイム表示
直径: 31mm
厚さ: 4.8mm
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
石数: 37
クロノメーター認定: なし
価格&発売時期
価格: 77万2200円(税込)
発売: ノモス公式オンラインストアおよび正規販売店
限定: あり、各175本限定
ヴァシュロン・コンスタンタンは、世界で最も立派かつ重要な美術館のひとつであるニューヨークのメトロポリタン美術館と新たなパートナーシップを結んだことを発表した。ヴァシュロンとメトロポリタン美術館は、教育と芸術の両面の取り組みで協力し、将来の世代のために知識を深めるとともに、非常に興味深い時計に関する未来のコラボレーションを約束した。
ヴァシュロン・コンスタンタンの創業は、1755年9月17日にジャン=マルク・ヴァシュロン(Jean-Marc Vacheron)によって交わされた契約から始まる。その契約文書のなかで、ジャン=マルク・ヴァシュロンは5年間にわたって若い弟子に自分の芸術を教えることを約束した。現在、ヴァシュロンのウォッチメイキングの核となる技術は40程度あり、その培ってきた技術は、何十年にもわたって絶えず再考、適応、改良され、前の世代によって開発された芸術性と技術に依存しているとメゾンは述べている。しかしそれ以上に、ヴァシュロンには “One of Not Many Mentorship Program”というものがあり、音楽を含む芸術分野全般にわたって広く知識を伝えている。
それならばヴァシュロンが、年間を通じて2万9000以上の教育イベントやプログラムを開催するザ・メットと提携することは理にかなっているように思う。またブランドは、今回の新たな提携をとおして、ふたつの教育機関が協力し合いながら、より多くの教育的イニシアチブを将来的に展開していくことを明言しているが、それらのプログラムがどのようなものになるかについての詳細は不明である。中学生を対象としたエナメルワークショップとか? それとも時計製造技術を体系化し、ある種恒久的な展示をするのか、はたまたこの時代の時計製造の長期的な記録とするような、時計仕上げのプロジェクトが登場するのだろうか? あなたの推測は私と同じくらい正しいので、ぜひコメントに寄せて欲しい。
ヴァシュロン・コンスタンタンCEOのルイ・フェルラ(Louis Ferla)氏と、ザ・メットのマリーナ・ケレン・フレンチ・ディレクターであるマックス・ホライン(Max Hollein)氏。
この発表についてもう少し調べてみると、ザ・メットとのパートナーシップによっていくつかの腕時計が誕生することは確実だった。それらは、ヴァシュロンの“ルーヴルコレクションへの入札”オークションや、今年初めに取り上げた“ピーテル・パウル・ルーベンスへのオマージュ”で目にしたような、ユニークな時計に似たものになると予想している。
いずれの場合も、顧客はヴァシュロンのレ・キャビノティエ工房の職人の助けを借りて、お気に入りのルーブルコレクションの作品を自分だけのユニークな時計に仕上げることができた。またそれに続く“メティエ・ダール 偉大な文明へ敬意を表して”コレクションでは、4つのデザインの時計がそれぞれ5本ずつシリーズ化された。美術館とのパートナーシップから生まれる時計デザインの幅広さを示したのは、実はこれらの時計だった。
2020年のときと同じように、私はザ・メットとのパートナーシップから何が生まれるか想像し始めた。プログラムは今のところ、コレクションのなかでメットが所蔵する最も有名な作品を避けている。ヨハネス・フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』は除外されているし、フィンセント・ファン・ゴッホの『麦わら帽子をかぶった自画像』もそうだ。エマヌエル・ロイツェの『デラウェア川を渡るワシントン』はちょっとありがちかもしれない。そして正直に言うと、私はほとんどの時間をメトロポリタン美術館のアメリカ館でハドソン・リバー派の絵画を見て過ごすことが多い。
私がこれらのアーティストを愛しているからといって、素晴らしいミニチュア(時計)と同列に扱われるわけではない。実際、時計の文字盤にするために選ぶアートとしては不適切である。あまりにも壮大で、細かすぎるのだ。アルフレッド・ウィリアム・ハントの『4月の雹を伴う嵐の後のスノードン山』なら、ミニチュアの柔らかな風景画になるかもしれない。少なくともフレデリック・エドウィン・チャーチの『アンデスの中心』よりはいいだろう。もしユーザーのどなたか、私を喜ばせてくれるような作品を依頼したいと思っているのならチャールズ・シュレイフォーゲルの『私のバンキー』をおすすめしてもいいだろうか? それは絵画の“アクション”の感覚を維持しながら、小型化するのに十分なダイナミックさがあるように思う。いずれにせよ、このプログラムがどんな作品を生み出すのか楽しみだ。
静謐な歩廊を飾るアートや高級品のなかでもひと際目を引くのがパルミジャーニ・フルリエのタイムピースだ。歴史に培われ、タイムレスな気品漂う空間で同じ価値観を共有する。伝統を現代に継承するという点ではこれほどふさわしい時計はないだろう。それもブランドの原点は、時計師ミシェル・パルミジャーニ氏が1976年に設立した修復工房にあるからだ。
時が止まってしまった古の時計を当時のままに復元するその天才的な技は、すぐにサンド・ファミリー財団が注目した。スイスの製薬大手のサンド社を背景にした財団が所有する歴史的な時計やオートマタの修復管理責任者に任命されたのだ。ミシェル氏は修復の仕事のかたわら自身で時計作りにも専念していて、1996年にパルミジャーニ・フルリエを設立。これを支えたのもやはり同財団で、先のボー・リヴァージュもその傘下にある。
こうした絶大なバックアップにより、2000年以降、パルミジャーニ・フルリエは独立系ブランドとして垂直統合の生産基盤を整えた。企画開発の本丸であり、いまも修復部門を持つ本社に加え、ケースのレ・アルティザン・ボワティエ、文字盤のカドランス・エ・アビヤージュ、ムーブメントパーツのアトカルパとエルウィンといった専業メーカーを統合し、特にパルミジャーニ・フルリエからムーブメントの開発製造部門が独立したヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエは名だたるスイス高級時計のムーブメント開発を担い、広く知られている。
これらの特化した専門技術を持つ拠点で内製化することで、独創的な技術開発と高い品質レベルを維持し、ジャストインタイムの生産を図る。しかもそれぞれが他ブランドにも生産供給することで、幅広い技術とノウハウの研鑽と安定した経営基盤を築く。こうした理想的なマニュファクチュール体制によって、パルミジャーニ・フルリエのオリジナリティは生 まれているのだ。そしてその根底にあるのは、修復で学び、その技と精神を現代に伝える創業者ミシェル・パルミジャーニ氏の創造性に他ならない。
スイス時計の隆盛とともに大きな変革期を迎えるなか、パルミジャー ニ・フルリエにも新たな歴史が始まった。ブランド誕生25周年に当たる2021年、グイド・テレーニ氏のCEO就任だ。20年以上に渡ってブルガリの時計部門を牽引し、垂直統合の生産体制始め、本格ウォッチメイキングの軌道を敷いた。その辣腕が発揮されたのが、リローンチした「トンダ PF」だ。
ベーシックな3針は36mmから40mmというユニセックスやヴィンテージ感ある程よいケースに、ベゼルには細密なローレット加工を施す。これはモルタージュとも呼ばれ、ギリシャ建築の柱から着想を得た、ブランド黎明期から続く手彫り装飾だ。さらにケースから伸びた雫型のラグには、自然界の生み出した神秘の美であるフィボナッチ数列による曲線を用いる。そして文字盤にはバーリーコーン(麦の穂)パターンのギヨシェが施され、インデックスとロゴのみにそぎ落とされたミニマルなフェイスに美しさが際立つ。
こうしたブランドの象徴的な意匠を、クラシックではなく、一体型ブレスレットを備えた現代的なスタイルを組み合わせた。それもパルミジャーニ・フルリエをよりモダナイズし、新たなラグジュアリーを打ち立てようというテレーニ氏の挑戦である。
2022年に発表されたトンダ PF GMT ラトラパンテでは、現代的な実用機能であるGMTを搭載する。時針はロジウムメッキのゴールドとローズゴールドの2本を重ね合わせ、その1本を時差に合わせて8時位置のプッシュボタン操作で1時間毎に進ませ、異なるふたつの時間を表示する。リューズと一体になったプッシャーを押せば、針は瞬時に重なり、その存在も感じさせない。通常ラトラパンテはクロノグラフの機能を差すが、ここではトラベルタイムを意味するのである。
これに続き、今年発表されたトンダ PF ミニッツ ラトラパンテはよりユニークな機能だ。GMTが時針だったのに対し、2本の分針を重ね合わせ、ケース左側面の8時位置のプッシャーで5分、10時位置のプッシャーで10分毎に1本の針を進ませる。針はそこに止まり、カウントダウンを計時する。そしてリューズと一体になったプッシャーを押せば、再び針が重なるスプリットミニッツである。
いわゆるラグジュアリースポーツと呼ばれるスタイルではあるものの、より洗練を極め、独創的な実用機能を内に秘める。特別な複雑機構を備えながらも、ひけらかすのではなく、必要なときにだけ現れるアンダーステイトメントな表現手法は、まさにクワイエットラグジュアリーと呼ぶにふさわしい。 パルミジャーニ・フルリエは、先人の叡知を注いできた時計が時にはアートのように寄り添ってきたことを思い起こさせる。修復を通して学んだその文化と価値を受け継ぎ、現代からさらに未来に繋げんとする意思が唯一無二の存在とさせるのだ。